携帯4社のインフラ大作戦[第2回]【NTTドコモ】LTE加入者は4年後に1500万へ

今春までに携帯各社の40Mbpsクラスのサービスが出揃うことで、モバイルデータ通信市場の様相は一変する。連載「携帯4社のインフラ大作戦」の第2回は、日本初のLTEサービスを開始したNTTドコモのインフラ戦略を見る。

12月24日、NTTドコモがLTE(Long Term Evolution)の商用サービス「Xi」(クロッシィ)をスタートさせた。

LTEは、現行の3Gの後継としてITU-Rで標準化が進められている4G(IMT-Advanced)を想定してドコモなどが開発を進めてきたシステムを、3G用の周波数帯に導入できる技術として実用化したものだ。2009年春に3GPPで標準化された。(1)光アクセスに匹敵する100Mbpsを超える高速データ通信にも対応可能、(2)周波数利用効率がHSPAの3~4倍と高い、(3)伝送遅延が極めて小さいことなどがLTEの大きな特徴だ。

今回ドコモが導入するLTEシステムは20MHz幅(上り下りの片方向分、以下同じ)の周波数帯域を使った場合、下り最大150Mbpsのデータ通信を実現する能力を持っている。ただし、当初LTEに振り向けられる帯域はW-CDMA/HSPAの搬送波1波分の5MHz幅となるため、開業時の通信速度はフルスペックの4分の1、下り最大37.5Mbpsとなる。

今後ドコモは周波数利用効率の高いLTEに3Gユーザーを巻き取ることで順次LTE用の帯域を確保し、高速化を図っていく計画で、2013年から2014年にかけて75Mbps、さらに100Mbpsへの増速を図ると見られる。空港ビルなど、帯域の制約が少ない屋内施設では最初からLTEに10MHz幅を振り向け、下り最大75Mbpsのサービスが提供されている。

当初のサービスエリアは東京23区、大阪市、名古屋市の一部と首都圏・愛知県・関西地区の主要5空港の周辺。2012年3月には県庁所在地級都市で使えるようになり、2012年度に全国主要都市にエリアを拡大する。なお、端末は3Gとのデュアルになるため、LTEエリア外でもドコモのW-CDMA/HSPA網で通信できる。

図表 NTTドコモのLTE展開プラン
NTTドコモのLTE展開プラン

サービス開始時点で提供される端末はデータ通信用のみだ。USB型の「L-02C」(LGエレクトロニクス)、ExpressCard型の「F-06C」(富士通)の2機種がラインナップされる。2011年度上半期にはモバイルWi-Fiルーターが投入され、この年の冬モデルからハンドセット(音声端末)の展開が始まる。

L-02C F-06C
ドコモのLTE対応データ通信端末「L-02C」(LGエレクトロニクス製)と「F-06C」(富士通製)

最も効果的な容量拡大策

ドコモがLTEを展開する狙いの1つは、LTEの高速・大容量・低遅延という特性を生かして、新たなサービスを展開することだ。ドコモでLTEの技術開発を所管する研究開発推進部長の尾上誠蔵氏は「LTE対応ハンドセット向けに、ネットワークと端末の機能を連携させた新しいサービスを開発していきたい」と意気込む。

NTTドコモ 執行役員 研究開発推進部長 尾上誠蔵氏
NTTドコモ 執行役員 研究開発推進部長 尾上誠蔵氏

もう1つ、ドコモにとって重要性が増してきたのが、スマートフォンの普及などで加速するデータトラフィック対策としての側面だ。11月8日の記者発表会でドコモの山田隆持社長は、Xiの特徴として特に「大容量性」を強調した。「HSPAより3倍周波数利用効率が高い。周波数の有効利用の観点から今後の基地局増設は原則LTEで行っていく」という。

ドコモはLTEを導入していく2GHz帯の基地局を都市部ですでに密に打っており、LTE導入による容量拡大効果は非常に大きい。同社にとってLTEの展開は、最も効果的なトラフィック対策といえるのだ。

月刊テレコミュニケーション2010年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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