携帯4社の次世代インフラ戦略を読み解く[第11回]ソフトバンクのLTE戦略(後編)――700MHz/900MHz帯の取得を前提とした修正シナリオ

再三述べているように現在明確になっているソフトバンクの次世代インフラ整備プランは、あくまでも700/900MHz帯の取得を考慮に入れない暫定的なものである。では、700/900MHz帯の取得を視野に入れると、どうなるのか。後編では、直近の情報を踏まえて、同社のインフラ戦略の全体像を描いてみたい。

900MHz帯の15MHz幅を希望

ソフトバンクは、参入当初から現行の2GHz帯に比べ伝搬特性に優れる800MHz帯の取得に強い意欲を見せており、2004年には割り当てを求めて行政訴訟まで起こした(2005年3月に取り下げ)。 

デジタルTV放送の終了に伴い、800MHz帯に近接する700/900MHz帯の割り当てが浮上すると、800MHz帯を持つNTTドコモ、KDDIとのイコールフッティングが確保されていないとして、700/900MHz帯の優先的な割り当てを求めてきた。情報通信審議会の専門部会「700/900MHz帯移動通信システム作業班」が2010年3月に行ったヒアリングでは、ソフトバンクは割り当ての対象となると見られていた計40MHz幅の半分超、20MHz幅以上の割り当てと、2012年の利用開始を要望している。

700/900MHz帯に関する議論は、2010年5月からは「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」に受け継がれ、6月に改めて携帯電話事業者に対して割り当て希望帯域、帯域幅、利用開始時期などのヒアリングを実施している。この中でソフトバンクは、700MHz帯と900MHz帯のそれぞれを海外のバンドプランに準拠させることを前提として、900MHz帯での15MHz幅の割り当てを求めた。利用希望時期は同じく2012年としている。3月の「20MHz幅以上」よりも控えめの要望となったのは、GSMの周波数を3Gに転用するUMTS900(3GPPバンド8)と呼ばれるバンドプランに準拠した場合、日本では最大15MHz幅程度しか携帯電話用には振り向けられないためだ。

ソフトバンクが、割当可能な帯域が比較的狭い900MHz帯の取得に舵を切ったのは、同社が展開中のiPhone4がすでにUMTS900をサポートしており、トラフィック対策に直ちに活用できる利点があるためである。

他方、700MHz帯ではより多くの帯域が割り当て対象になる可能性があったが、この帯域で有望視されているプランはTV放送帯域の縮減や放送中継回線(FPU)の移行などが前提となり、調整の難航が予想される。このため、早期割り当ての可能性が高い900MHz帯に的を絞った格好だ。900MHz帯でも移動通信用の帯域の確保にはMCA無線やRFID帯域の移行が必要だが、MCA無線は利用者が限定されていること、800MHz帯RFIDは普及が進んでいないことから、比較的早期に一部の帯域は利用が可能になると判断した。

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