「SD-WANはユーザーが主導権とる好機」、ガートナー池田氏に聞くSDNの活かし方

今のSDNは「ベンダー都合」――。こう指摘するのは、ガートナー ジャパンでITインフラストラクチャ&セキュリティ ネットワーク担当リサーチディレクターを務める池田武史氏はこう指摘する。では、ユーザー企業にとって本当にメリットのあるSDNは、どうすれば実現できるのか。SD-WANがその契機になると池田氏は説く。

――企業ネットワークにおけるSDN(Software-Defined Networking)活用の現状をどう見ていますか。

池田 普及は進んでいません。今のSDNの最大の問題点は「ベンダー都合」になってしまっていることです。そのため、SDNのメリットがユーザーに正しく伝わっていません。

通信事業者もSDNとNFV(Network Functions Virtualization)を使ったWANサービスを提供していますが、これも、ユーザーの宅内にあった設備をいかにしてネットワーク側に取り込むかという囲い込みの手段になってしまっています。単なる“アウトソースの取り合い”に過ぎず、それではユーザーにも近寄り難く見えます。

「ネットワークを民主化しよう」――運用の省力化や自動化、構成変更の柔軟性といったSDNのメリットは、企業ネットワークの課題に対して有効なのは間違いなのですが。

池田 これまでのSDN、そしてNFVもそうですが、ベンダー側の提案は、“ポイントソリューション”のような売り方ばかり目立ちます。それが必ずしも悪いわけではないのですが、企業のインフラ全体をどう変えていくのかという、もっと広いスコープでSDN/NFVを捉えるべきです。

SD-WANの検討を足掛かりに、ユーザー企業が主体的に設計し運用するネットワークを手に入れるべきです。そのチャンスがようやく訪れています。格好良く言えば「ネットワークを民主化しよう」ということですね。

これまでネットワーク業界は、通信事業者と大手ベンダーによってコントロールされる保守的なマーケットでした。SDNをうまく使えば、それをユーザー主導にできるかもしれない。そうした熱で最初のSDNは立ち上がりました。データセンターではそれがうまくいっている部分もありますが、エンタープライズのネットワークまでその波が来ていません。

――そうなると、既存のベンダーや通信事業者が積極的になれるかという問題が出てきます。

月刊テレコミュニケーション2016年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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