AWS Direct Connectの3つのメリットとは?
前回はAWS Direct Connectが日本的クラウドファーストを支える重要なサービスの1つになっていることを紹介したが、AWS Direct Connectを選択するメリットは具体的には次のように整理できる。
(1)セキュリティに関する懸念解消
まずはセキュリティに関する懸念解消だ。AWSと社内イントラなどの間をセキュアに接続する方法としては、インターネットVPN(IPsec VPN)も用意されており、シスコやジュニパー、ヤマハのルーターなどが対応している(対応ルーターの詳細はAWSのWebサイトで確認できる)。
つまり、閉域網を用意しなくても十分なセキュリティ強度は実現可能だが、「それでもインターネットを介して、重要な社内データをやりとりしたくない」というニーズは非常に大きいだろう。こうしたニーズにAWS Direct Connectは応える。
(2)優れたパフォーマンス
続いてのAWS Direct Connectのメリットは、専用線ならではのネットワーク品質の高だ。ベストエフォートであるインターネットと違い、高スループット・低遅延の接続性を安定的に確保できる。
クラウドの場合、ネットワークのパフォーマンスがより直接的にシステム全体のパフォーマンスに影響する。このためセキュリティではなく、むしろネットワークパフォーマンスを主たる理由に、AWS Direct Connectを選択している企業は多い。ある大手SIer幹部は、次のように語る。
「うちはコンテンツプロバイダーの顧客が多いこともあるが、ほとんどの顧客がAWS Direct Connectを使ってAWSと接続している。その理由は、セキュリティというより、ネットワークのレスポンスの良さだ。インターネットVPNとはパフォーマンスが全然違う」
基幹システムや事業用インフラにAWSを活用するケースなどでは、高品質なネットワークパフォーマンスの安定的な確保が必須であるケースがほとんどだろう。
なお、柔軟にスケールできるクラウドは、もともと事業用インフラに適しているが、アマゾン データ サービス ジャパンの大谷晋平氏によると、AWSの利用用途として最近拡大しているのがIoT/M2M向けだという。IoT/M2Mの場合、事業が拡大するにしたがい、ビッグデータがどんどん蓄積されていく。このため、特にクラウドとの相性に優れているというわけだ。
(3)データ転送料が割安に
インターネット接続との違いとしては、データ転送料が安価になることもある。
AWSの利用には、データ転送料が必要だ。インターネットからAWSに入る「上り」のデータ転送については無料だが、AWSからインターネットに出て行く「下り」のトラフィックには従量制で課金される。例えば、月間のデータ転送量が1GB~10TBの場合は、1GB当たり約24円(0.201米ドル)である。
AWS Direct Connectを介したデータ転送についても同じく課金されるが、その課金額はインターネットの約4分の1になる。AWS Direct Connectの利用自体にコストがかかるため、この点を主な理由にAWS Direct Connectが採用されるケースはほとんどないようだが、これもメリットの1つに挙げられる。