O2Oで大注目! 無線LANによる屋内測位技術とは?

無線LANが広く普及するなか、この無線LANインフラをO2Oなどのマーケティングに活用しようといった新しい動きも活発化している。そのうえでカギとなるのが「屋内測位技術」。無線LANの屋内測位技術とプッシュ型情報配信の最新動向を探った。

無線LANの新たな利用法として、屋内測位に注目が集まっている。GPSが使えないビルの中などで、デバイスの位置を把握する手段として無線LANを活用しようとする動きである。

スマートフォンを使った施設内のナビゲーションや博物館の展示物の案内などに加えて、目の前の店舗で使える割引クーポンをスマートフォンに自動配信するなどのO2O分野での活用も始まっている。本記事では、無線LANによる屋内測位の技術動向とその活用の可能性を見ていく。

電波強度で位置を測定

無線LANでは、1つのAP(アクセスポイント)のカバーエリアが半径数十m程度に限定されるため、接続中あるいは受信中の電波が最も強いAPの場所から、デバイスの位置を把握することができる。さらに複数のAPから届く電波の強度や到達時間などを用い3点測位を行うことで、より高い精度で位置を特定することが可能だ(図表1)。無線LANによる測位はこうした手法で実現されており、国内外で多くの技術が開発されている。

図表1 無線LANによる位置測位システム(PlaceEngine)の基本原理
無線LANによる位置測位システム(PlaceEngine)の基本原理

その1つで、最近、屋内測位分野で実績をあげているのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(SCSL)が開発し、現在は開発メンバーによって2007年に設立されたクウジットが商用展開を行っている「PlaceEngine(プレイスエンジン)」だ。グランフロント大阪の「コンパスサービス」、東京国立博物館の案内アプリ「トーハクなび」、AR(拡張現実)を利用したナビ機能を持つ成田空港の公式アプリなどで、PlaceEngine技術は用いられている。

東京国立博物館の「トーハクなび」
東京国立博物館の「トーハクなび」では、無線LANで位置を特定することで、ARを活用した展示物の解説やゲームなどが提供されている

PlaceEngineでは、電波強度による3点測位と、ビーコン信号(APがデバイスに存在を知らせるために定期的に発信している信号)のデータベース照合によるAPの特定によって、デバイスの位置を算出している。

無線LANを使った測位では、電測車などを用いて市街地などに存在する膨大な数のAPのビーコン信号を調査し、APの位置のデータベースを構築して、ノートPCなどの測位を行うシステムが実用化されている。PlaceEngineはこれに早くから取り組んでいるが、GPS搭載デバイスの普及などから、現在は屋内測位を中心に展開されているという。

屋内測位分野では無線LAN以外に、IMES(GPSと同じ無線方式を使った測位技術)や、音波・可視光を使う技術などが実用化されている。

こうした中で特に無線LANが使われるケースが多くなっている理由は、(1)スマートフォンに標準搭載されているWi-Fi機能が利用できること、(2)設備も既存の無線LANのAPを活用して容易に構築できることにある。測位精度も5~10数m程度が確保されている。

SCSLでPlaceEngineの開発に携わり、現在はクウジットの取締役CTOを務める塩野崎敦氏は「手軽に導入できることが無線LAN測位の最大の利点」とした上で、「将来的には、より高精度なシステムとのハイブリッド型が主流になるのではないか」という見方を示す。PlaceEngineは病院の職員や患者など行動調査や機材管理などでも利用実績がある。

月刊テレコミュニケーション2013年10月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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