KDDI嶋谷専務インタビュー「“最強のLTE”を新技術の積み上げで実現」

LTEサービスを開始したKDDIは、最大150Mbpsへの高速化計画や、品質向上に向けた新施策を相次いで発表。iPhoneでソフトバンクとしのぎを削りながら、2年先行するNTTドコモを猛追している。3M戦略を支えるKDDIのネットワーク戦略は今後どう進むのか。技術統括部長の嶋谷吉治氏に聞いた。

――iPhone 5の発売に合わせて、2012年末に予定していたLTEサービスの開始を前倒しました。冬モデルの発表会でも、田中社長は「au 4G LTE」の優位性を強調していました。新たなネットワーク構築を短期間でここまでこぎつけるには相当な努力が要ったと思います。

嶋谷 800MHz/1.5GHz帯と、iPhone 5が対応している2GHz帯の両方でLTEのインフラを急ピッチで整えなければならず、この1年、大変だったのは事実です。iPhone 5の発売時にLTEネットワークが無いのでは話になりませんから。

――どのように実現したのでしょうか。

嶋谷 現存の3G用2GHz帯基地局装置にカードを差し替えるだけでLTE化ができたことが大きな要因でした。これは800MHz帯の基地局でも同じです。一部、新たに建設している局もありますし、既存局の更新も1局1局は比較的短時間の工事ですが、短期間で多くの基地局をLTE化することに大変苦労しました。

LTEサービスはNTTドコモに比べてスタートが2年遅れています。800MHz帯再編の影響があったとはいえ、遅れた以上、やるからにはロケットスタートしなければいけないという決意で取り組んでいます。

ピコセルを世界初導入

――LTEでは高速化に目が行きがちですが、KDDIでは「ピコセル」や「Optimized ハンドオーバー」「CSFB(Circuit Switched FallBack)」などの新技術によって、使い勝手や体感品質の向上にも注力しています。

嶋谷 その通りです。お客様体感に直結するという意味で、ネットワークのきめ細かい作り込みは非常に重要だと思います。

世界で初めて導入したピコセル基地局は、今回、2GHz帯のLTEエリアを急いで整備するのにも役立ちました。マクロセルとピコセルを組み合わせてエリアの隙間を埋めることで、お客様が移動しても3Gに落ちずにスムーズにLTEを使えます。

ピコセルは本来、マクロセルのカバーエリアの中に重ねて設置して、トラフィックの増大を吸収するために容量の“厚み”を持たせるものとして考えており、その効果も非常に大きいものです。今後は、例えば都心部などのトラフィックが集中するエリアでサービス品質を高めるためにピコセルを活用していきます。

――エリアカバーと、サービス品質向上の両面で効果が出るわけですね。

嶋谷 工事が容易なことも重要です。設備自体が小さく、重量も10kg程度と軽いため、ビルの壁面や看板の裏などにつけることも可能で、エリア整備のスピードにもプラスに働きます。

月刊テレコミュニケーション2012年12月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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嶋谷吉治(しまたに・よしはる)氏

1974年3月京都大学工学部気工学第二学科卒業。同年4月国際電信電話(KDD)入社、2000年6月執行役員ネットワーク企画室長、10月ディーディーアイ(現KDDI)理事技術企画部長、2005年4月執行役員ネットワークソリューション事業本部長、12月執行役員運用統轄本部長、2009年4月執行役員技術部門担当、6月取締役執行役員常務技術部門担当、2010年4月取締役執行役員常務技術統括本部長兼運用統括本部担当兼建設統括本部担当、2011年4月取締役執行役員常務技術統括本部長、6月取締役執行役員専務技術統括本部長、現在に至る

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