「トラフィック容量を1000倍にする方法」 ノキアシーメンスがLTE-Advancedのデモなど披露

「10年後には、日本のモバイルデータトラフィックは今の1000倍になる」――。今、携帯キャリアにとって最大の悩みの1つといえば、スマートフォン普及によるトラフィックの急増問題。ノキアシーメンスネットワークスは11月16日、その解決方法を紹介する説明会を開催した。また、会場ではLTE-Advancedのデモなども行われた。

「日本のモバイルデータトラフィックは2010年から2011年の間に2倍に増大したが、毎年2倍になると10年後にはどうなるか。トラフィックは1000倍になり、LTEだけではまだまだ足りない」

ノキアシーメンスネットワークス(NSN)は2011年11月16日、戦略説明会を開催。そのなかで、同社研究所で特別研究員を務めるハリー・ホルマ氏はこのように述べた。では通信事業者は、スマートフォン普及によるトラフィック爆発にどう対処していけばいいのか――。NSNはLiquid Radioというコンセプトを提唱している。

国内の基地局シェアは第1位に

本題に入る前に、NSNの概要を紹介しよう。同社は、携帯電話メーカーのノキアと総合電機メーカーのシーメンスの合弁により2007年に設立された通信事業者向けネットワークインフラベンダー。今年4月にはモトローラソリューションズのネットワークインフラ事業の買収も完了した。NSNの2010年の総売上高は127億ユーロで、従業員数は7万4000人となっているが、「特筆すべきは研究開発。通信だけに特化しているのに、2万人がR&Dに従事している」と日本法人社長の小津泰史氏は語った。

ノキアシーメンスネットワークス 代表取締役社長の小津泰史氏
ノキアシーメンスネットワークス 代表取締役社長の小津泰史氏

国内での実績については、モトローラソリューションズの買収によってKDDIも加わり、大手3キャリアすべてがNSNの顧客となっている。富士キメラ総研の調査によれば、国内の携帯電話基地局市場でのNSNのシェアは24.1%で1位だ。

NSNの国内での主要実績と携帯電話基地局市場でのシェア
NSNの国内での主要実績と携帯電話基地局市場でのシェア

小津社長が挙げたNSNの強みはまず“グローバルボリューム”である。NSNでは3分に1台の割合で基地局を作って出荷しているそうだが、こうしたグローバルベンダーならではのコスト競争力が大きな特徴となっている。そのうえで、「グローバル製品を日本に押し付けるのではなくて、日本向けにカスタマイズしてお届けする」と小津氏は強調した。また、海外での実績やネットワークなどを生かし、日本の通信事業者の海外進出に貢献する“架け橋”の役割も果たしていくという。

重さわずか10kgのピコセル用LTE対応基地局

さて、それではNSNが提案するLiquid Radioとはどういったものなのか。Liquid Radioは、(1)ベースバンドプーリング、(2)アクティブアンテナシステム、(3)ヘテロジニアスネットワーク対応のSONツールの3つの技術要素から構成されている。

Liquid Radioの主な技術要素
Liquid Radioの主な技術要素

ベースバンドプーリングは、従来のようにベースバンドモジュールを各基地局サイトに設置するのではなく、遠隔の局舎などに集積するための機能。そのメリットは、パフォーマンスの向上とCAPEX/OPEXの削減だ。例えばオフィス街のトラフィックは昼間は多いが夜間は少ないなど、時間帯によりトラフィックは変動する。このため各基地局サイトに設置するやり方では、ベースバンド能力に余剰が生まれる時間帯、または不足する時間帯がどうしても発生してしまう。しかし、ベースバンドプーリングにより、各エリアの必要に応じ共用のベースバンド能力を分配する形をとれば、パフォーマンスの最適化と余剰リソースの削減が可能になる。また、1箇所で一元管理することで運用コストも下げられるという。

次のアクティブアンテナは、RFモジュールとアンテナを一体化したソリューションだ。アンテナのチルト角などを変えることにより、電波の指向性を制御するビームフォーミングに対応し、「シミュレーションの結果では、キャパシティは最大で65%改善する」(ホルマ氏)という。

ビームフォーミング機能の概要
ビームフォーミング機能の概要

そして最後のSON(Self Organizing Network)ツールは、基地局の設定を自動で最適化するためのソリューションである。トラフィック爆発に対処していくには、マイクロセル/ピコセル/フェムトセルと小さな基地局をどんどん打っていく必要がある。また、Wi-Fiへのオフロードなど、異なる通信方式との組み合わせも重要だ。SONツールでは、このようななか複雑化する置局設計や最適化のプロセスを自動化できる。

また、ホルマ氏は、マイクロセル/ピコセル環境に最適だという小型基地局「Flexi Lite BTS」も紹介。容量は10リットル、重量は10kgで、もちろんLTEにも対応する。さらに、会場では800MHz帯と2.6GHz帯の異なる周波数帯の搬送波を束ねて高速化を図るLTE-Advancedのキャリアアグリゲーション機能のデモなども披露された。

LTE-Advancedのデモ
異なる帯域の搬送波を束ねることで高速化を図るのが、LTE-Advancedのキャリアアグリゲーションという技術。茶色の部分が2.6GHz帯、緑が800MHz帯のエリアを示しており、両方の周波数を使うことでデモでは300Mbps近いスループットが出ていた。なお、デモの条件だが、両帯域とも2×2MIMOのLTE-Advancedで、帯域幅は下り20MHz

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