IP監視カメラの最新トレンド解説――BCPニーズとHD化で勢い加速

アナログカメラからネットワークカメラ(IPカメラ)への移行が進む監視カメラシステムの世界だが、東日本大震災の影響と高精細化により、その勢いが加速している。IP監視カメラシステムの最新トレンドをレポートする。

東日本大震災の影響で、監視カメラへのニーズが高まっている。従来の防犯目的だけでなく、BCP(事業継続計画)対応の一環として、万一の場合でも他の拠点や工場の様子を把握できるようにするためだ。

まず、市場動向を押さえておこう。監視カメラにはCCTVアナログカメラとネットワークカメラ(IPカメラ)がある。以前はアナログカメラが主流だったが、近年はネットワークカメラが急増している。ネットワークカメラはアナログカメラのような画質の劣化がないため、これまでから注目はされていたが、価格差が普及の阻害要因になっていた。

だが、ここに来て地上デジタル放送と同等の解像度を持つフルHD対応のネットワークカメラが登場するなど、HD化が本格化しつつあり、人の顔や車のナンバープレートなどの識別がより鮮明となり、アナログカメラとの差が歴然となってきた。これにともない需要も増加している。

富士経済がまとめた「2011セキュリティ関連市場の将来展望」によると、2011年のアナログカメラ市場は前年比10.7%減の201億円に留まる見込みだが、IPカメラ市場は同21.1%増の155億円に達すると予測している(図表)。この傾向は、今後ますます加速し、2013年にはIPカメラがアナログカメラの市場規模を上回るとみている。そして、2014年にはアナログカメラが2010年比29.8%減の158億円にまで減少し、逆にIPカメラは同65.6%増の212億円にまで達する見込みだ。

図表 監視カメラおよび映像録画装置の市場予測
図表 監視カメラおよび映像録画装置の市場予測

また、監視カメラにはリアル監視と録画監視の2つの用途があり、後者の場合には映像録画装置が不可欠だ。この映像録画装置の分野でも変化は起こっている。

映像録画装置は当初、アナログカメラ対応のDVR(デジタルビデオレコーダー)が中心だったが、ネットワークカメラの普及にともなって、NVR(ネットワークビデオレコーダー)の需要が急伸している。富士経済では2014年にはNVRがDVRとほぼ同等の140億円規模の市場になるとみている。

高画質とデザインを重視

ネットワークカメラのトレンドと主要メーカーの対応を見ていこう。ソニービジネスソリューション営業・マーケティング部門プロフェッショナルビジネス営業部IPM営業課シニアマーケティングマネージャーの野村幸司氏が「我々は市場で言われている“アナログからIPへ”ではなく、“アナログからHDへ”というスタンスで展開している」と語るように、各社は「HD」をキーワードに高画質を追求している。なかでもソニーは、昨年度だけでも20機種以上のHD対応IPカメラを市場投入した。

各社は高画質を追求したうえで、それぞれの拘りのポイントで差別化を図っている。アクシスコミュニケーションズ・マーケティング本部シニアマーケティングマネージャーの佐藤秀一氏は、「品質にこだわっている」と語る。HD画質はもちろんだが、筐体のデザインにもこだわりがあるという。「設置すると威圧感を持たれてしまうカメラが多いなかで、我々は色も含めて柔らかいデザインの製品を投入している」と話す。特に店舗などでは天井や壁に設置した時に、店内のデザインを壊すような存在感のあるカメラは敬遠される。もちろん、画質の良さも高い評価を得ており、720p、1080pの解像度を出せるので、画質と筐体デザインの両方の評価で「当社の製品を指名買いされるユーザーが多い」という。

アクシスコミュニケーションズのPTZドームネットワークカメラ「M50シリーズ」。720pHDの高解像度
アクシスコミュニケーションズのPTZドームネットワークカメラ「M50シリーズ」。720pHDの高解像度

ソニービジネスソリューションの野村マネージャーは「セキュリティに必要な高画質とは何か、を重要なコンセプトにしている」と語る。防犯等の用途では、ただ解像度を上げればよいという話ではない。例えば、暗くなったらモノクロに切り替えるといったデイ&ナイト機能がある。他社はシャッタースピードを遅くして少しでも光を取り込むことで対象物を撮影する方法を採用しているが、それだと動く対象物はブレてしまう。「我々は下位モデルでも光学フィルタを使ったデイ&ナイト機能を標準搭載しているほか、上位モデルでは逆光補正機能を搭載することでセキュリティに必要な高画質を確保している」という。

ソニーのボックス型「SNC-CH180」。強力な逆光補正機能と赤外線照射機能を搭載
ソニーのボックス型「SNC-CH180」。強力な逆光補正機能と赤外線照射機能を搭載

月刊テレコミュニケーション2011年11月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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