なぜサムスンは独自OSにこだわるのか?
一方、最近スマートフォンで快進撃を続けているサムスン電子にしても、市場全体におけるシェアは下落している。2010年の世界シェアは17.6%で、前年から1.9ポイント低下した。
サムスンはノキアと違って、スマートフォンに関して全方位戦略を採ってきた。Android、Windows Phone、さらにはサムスン独自のOSであるbadaもサポートしている。Androidを主力としながら、さらに独自OSまで手がけるとはメーカーとして大変な体力が必要になるが、そこまでしてbadaに取り組む理由は至って簡単だ。Androidがいくらオープンといっても、結局はグーグルの傘(管理)の下にあることは間違いないからだ。そのため多くの制約(特にグーグルが運用しやすい形態)が設けられることも考えられる。
事実、グーグルマップ以外の地図アプリをAndroidに実装するのは容易ではない。少なくともAndroidにはない独自機能を実装することは困難だ。他方、携帯電話事業者は、独自機能の搭載により端末の差別化を図りたいというのが本音だが、こうした事業者のニーズに応えるためにもサムスンはあえてbadaを推進しているのだ。また、アップルのiPhoneの成功が物語るようにOS、ハードウェア、アプリを押さえた企業は強い。おそらくサムソンはアップルに対抗できる唯一の企業だろう。
badaを搭載したスマートフォン「Samsung Wave II」 |
badaとは韓国語で「海」を意味し、従来サムスンが携帯電話で使用してきたOSをスマートフォン向けにアップグレードしたものだ。実績のあるOSをベースに開発されたものなので安定性には問題ない。
badaの大きな特徴は、柔軟な構造をもったフレームワークである。badaのプラットフォームは3つのレイヤから構成されている。まずカーネルだが、サムスン独自のRTOSのほか、Linuxカーネルも選択できる。
カーネルの上には、(1)デバイスレイヤ、(2)サービスレイヤ、(3)フレームワークレイヤの3つのレイヤがある。(1)デバイスレイヤは、グラフィックス、プロトコル、電話、セキュリティなど、電話機(スマートフォン)としてのコア機能を提供するレイヤだ。(2)サービスレイヤでは、SNS、アプリ内課金などサービスに関連する機能をbadaサーバーと連携して提供する。(3)フレームワークレイヤは、開発者のためのC++ベースのAPIを提供する。重要なポイントの1つは、様々なUIコントロール機能を提供できる点だ。さらにWebKitベースのブラウザやAdobe Flashをbadaアプリケーションに内蔵させることもできる。開発はSDKを使用しC++で行われるが、EclipseベースのIDEも利用できる。Androidと比べ、ユーザーや開発者が必要とする機能をより簡単に実現できる点がbadaの一番の魅力となっている。
このような特色をもったbadaであるが、課題はスマートフォン最大の特徴といえるオープンアプリケーションである。iPhoneやAndroidのように、数多くのアプリ開発者を引き寄せることができるのか。この点については大きな不安が残る。
果たして、badaは成功するのか、それとも第2のSymbianになるのか。非常に興味深いところだ。
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