「スマートフォンの普及は決してバラ色ではない」――mobidec 2010で夏野氏が講演

MCF モバイル コンファレンス 2010(主催:MCF、翔泳社)が2010年11月25日、都内で開催された。

基調講演には慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏が登壇し、「モバイル日本再起動のために」をテーマに講演した。

iPhoneが発売された2008年以降、日本でもスマートフォンが盛り上がりを見せている。夏野氏は「スマートフォンの価値はUIにある。国内の通信事業者や端末メーカーはタッチパネルへの対応が遅れた」と指摘した。

iPhoneをはじめXperiaやGALAXY Sなどスマートフォンの販売が好調だが、夏野氏によると「スマートフォンの普及は決してバラ色ではない」という。

スマートフォンの場合、アプリは都度課金であり、今月はダウンロード数が多くても来月はどうなるかわからず、CPはビジネスモデルが成り立ちにくいというのだ。一方、携帯電話のコンテンツは月額課金であり、スマートフォン人気に押されているにもかかわらず、市場規模は06年の367億円から09年は553億円と成長を続けている。こうしたことから、スマートフォンの普及はCPにむしろ厳しい状況をもたらすと夏野氏は指摘する。

スマートフォンが普及しても、携帯電話のコンテンツ市場は拡大している

また、スマートフォンの販売が好調な要因として、「安い価格」を挙げた。それによると、店頭では携帯電話の最新機種よりもスマートフォンの方が安く販売されており、「安いという理由だけでスマートフォンを購入している人もいることを理解する必要がある」(夏野氏)。

安い価格もスマートフォン人気の一因と指摘する

日本では、携帯電話市場の現状について「グーグルVSアップル」あるいは「スマートフォンVSガラケー(通常の携帯電話)」という構図で描かれることが多い。しかし、夏野氏は「グーグル、アップル、ガラケーは競合していない」と話す。すなわち、グーグルはWebサービの広告収入の極大化、アップルは端末とサービスの一体化による垂直統合による囲い込み、ガラケーを提供する通信事業者はトラフィック収入の拡大と、それぞれ「しかけづくり」の目指している方向性が異なるという。ただし、端末メーカーはアップルと競合することから、「今さらものづくりだけでいいのか」と疑問を投げかけた。

「端末メーカーはものづくりだけでいいのか」と疑問を投げかける

今後の展開については、「通信事業者は“土管化”が進む。アップルは“iWorld”を強化するだろう」と見る。さらに将来的には「中上位機種の約50%がAndroidになる」と予測する。「日本の端末メーカーはAndroidの波に乗り遅れている。私が決定できる立場にいたら、真っ先にガラケーをAndroid化したい。ガラケーをAndroidにしても何の問題も起きないだろう」と語った。

そして、日本の通信業界が世界で再びアドバンテージを取り戻すための提言として、「通信事業者は、端末メーカー、CP、ユーザーのWin-Win-Winのビジネスモデルを再考すべき」「端末メーカーは事業者の顔色をうかがうのをやめ、新しい価値で世界に出よ」「CPは安易な世界進出は危険であり、周到な戦略と市場の見極めが必要」などと語り、講演を締めくくった。

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