NTTドコモの法人新戦略に迫る(4)NTTドコモ「第三法人営業部」の研究――未開拓の中小企業に切り込む

NTTドコモは今年7月、中堅・中小企業開拓をミッションにした第三法人営業部を発足させた。シリーズ「NTTドコモの法人新戦略に迫る」の第4回は、第三法人営業部にフォーカスする。

今年7月1日、ドコモ法人事業部に新しい組織、第三法人営業部が発足した。中堅・中小企業を専門に担当する初めての組織であり、中小企業分野に対する強い決意の現われだ。

ドコモ法人事業部では、主として従業員規模で大企業、中堅企業、中小企業と分類し、担当組織を決めている。従来、大企業は第一法人営業部と第二法人営業部が担当するのに対し、中堅・中小企業については法人ビジネス戦略部と第二法人営業部というように、それぞれ担当部署が分かれていた。

他社よりも早くから法人市場に取り組んできたドコモでは、大企業を中心にアカウントマネージャー(AM)を置き、圧倒的な強みを発揮してきた。コンシューマー市場に言われる市場シェア「5対3対2」よりもかなり優位な地位を誇っているといわれる。

しかし、2007年のソフトバンクの「ホワイトプラン」登場を契機に、これまで具体的には手が付けられていなかったこの中小企業分野におけるモバイル導入が加速し始め、通信事業者間の競争も激化してきている。コンシューマー市場での飽和が言われ2台目需要などに話題が移る中で、残された巨大市場としての中小法人をめぐる争奪戦が加熱してきた。

特に限られた大企業、中堅企業に比べて、いわゆる中小企業は全国に百数十万社あるといわれ、まさに未開拓巨大市場だ。ドコモでも、法人契約のうち中小企業は約12万社と全体の約3分の2以上を占める。

第三法人営業部長で法人ビジネス戦略部長を兼ねる小関純氏は「全国的に中小企業分野の伸びは著しい。従来は地域支社が担当していたが、その潜在力を引き出し、個々の顧客をしっかりカバーしていくためには統一的に取り組み、強化する必要があると判断した」と新部門設立の狙いを語る。

販売は代理店と連携

ドコモ第三法人営業部の特徴は、中堅・中小企業の営業機能を強化しているという点だ。全国のドコモショップ、代理店と連携を強化し、これまで行き届かなかった分野を開拓する。

「ドコモの強みはドコモショップというしっかりとしたコンタクトチャネルを強化してきたことだが、法人においてもショップの法人担当をレベルアップして中小のお客様をサポートする体制を作り上げる。第三法人営業部の仕事は、中堅・中小企業の皆様に評価される端末、料金、ソリューションを用意することだ」(小関氏)。

第三法人営業部がまず手掛けたのは、これまで地域ごとに担当していた中堅・中小企業に対し、“4P”の観点から具体策を整えることだ。すなわち、Product(製品)、Price(料金)、Place(場所)、Promotion(プロモーション)という4つのポイントにおいて、統一的な施策を展開する。

その第1弾として今年7月、多岐にわたり複雑になっていた法人向け割引サービスを「ビジネスシンプル」に一本化した。

図表 「ビジネスシンプル」の料金表
ビジネスシンプル

2年間の継続契約を条件に基本料金を半額にする「ビジネス割50」と、契約回線数に応じて通話や通信の料金を10~30%割り引く「ビジネス通話割引」の2本立てに整理したことで、わかりやすい内容になった。グループ内の国内通話無料対象回線が従来の10回線から30回線に拡大したため、中小企業からの申し込みが9割を占めるという。

また8月31日には、富士通製の法人端末「F-10B」の発売を開始した。ワンセグやカメラなどの機能を省く一方、指紋センサーや開閉ロック、遠隔初期化などセキュリティ機能が充実しているのが特徴だ。ドコモ端末としては初めて通話内容を直接microSDに録音する機能も備えており、営業担当者などが商談内容の記録に使うことができる。カードにもパスワード機能があり、情報漏えい対策も抑えている。

月刊テレコミュニケーション2010年10月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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