デジタル変革を加速させる「5G URLLC」の世界(前編)5G最大の目玉「URLLC」で何が実現可能になるのか?

ミッションクリティカルな領域でモバイルネットワークを活用したい――。この声に応えるのが「5G URLLC」だ。LTEやWi-Fiなど従来の無線通信とは一線を画す性能と品質により、何が可能になるのか。

ミッションクリティカルな用途に使えるモバイルネットワーク。その“究極のかたち”が、5Gの要件の1つである「URLLC」だ。Ultra-Reliable and Low Latency Communicationsの略で、超高信頼かつ低遅延な無線通信を実現するものだ。

5GにはこのURLLCに加えて、超高速大容量の「eMBB(enhanced Mobile Broadband)」、大量端末接続の「mMTC(massive Machine Type Communications)」の3つの要件がある。標準化はeMBBが先行しており、商用化もまずは高速大容量サービスから開始される。

だが、モバイルネットワークの利用の裾野を拡げるという5Gの本来の目的からすれば、URLLCこそが「5Gの目玉」と言える。高速大容量通信とは異なる新たなユースケースの開拓につながるからだ。モバイルネットワークの弱点であった信頼性と応答時間が劇的に改善すれば、活用の幅はグッと広がる。

図表 代表的な5Gユースケース例[画像をクリックで拡大]
図表 代表的な5Gユースケース例

「コア網内で完結」で真価5G URLLCで実際にどんなことができるのか。その前に改めてURLLCとは何かを確認しよう。

標準化団体の3GPPおよびITU-Rは、URLLCの条件を「32バイト以上のパケットデータ量の99.999%以上の送信成功率」と「無線区間1ミリ秒(ms)以下の遅延」を同時に満たすことと定めている。2017年11月にURLLCの屋外実証実験を世界で初めて成功させたNTTドコモとファーウェイによれば、LTEで5Gと同等の送信成功率を達成するには、無線区間で5ms以上の遅延時間を要するという。5Gではそれが5分の1以下に短縮できるわけだ。

ただし、この「1ms」はあくまで無線区間の遅延であり、アプリケーション全体の設計においてはモバイルバックホール(有線区間)の伝送遅延やインターネットの遅延、アプリケーションサーバーの処理遅延等の影響のほうがはるかに大きい。信頼性の観点でも同様に、無線伝送以外の影響を考慮する必要がある。

そのため、URLLCの特性を活かすにはデバイスに近い場所、例えば無線基地局の背後やコアネットワーク内にアプリケーション処理系を置いて、短い経路で応答する「エッジコンピューティング」を組み合わせることが不可欠だ。コア側の仕組みも合わせてエンドツーエンドの遅延を短縮し、信頼性を高めるのである。

遅延や信頼性のコントロールが不可能なインターネットとクラウドは使わず、アプリ処理までコア網内で完結させることが、URLLCの大前提となる。

月刊テレコミュニケーション2018年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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