仕掛け人はフェイスブック、マイクロソフト!「光伝送」で進むオープン化と機能分離

データセンター向けスイッチやセルラー基地局設備等で進む通信・ネットワーク機器のオープン化の波は、ついに光伝送システムの領域にも広がり始めた。仕掛けるのは、フェイスブック等のOTTだ。

Voyager(ボイジャー)にCassini(カッシーニ)と聞くと、宇宙を旅する惑星探査機を思い浮かべる人もいるかもしれない。それらが打ち上げられたのは前世紀のことだが、現在、同じ名を冠する通信装置がICT業界の注目を集めている。フェイスブックが設計・開発に深く関わる“ホワイトボックス”光伝送装置だ。

フェイスブックは2016年から、オープンソースによる通信機器を開発するプロジェクト「Telecom Infra Project(TIP)」を推進している。VoyagerはそのTIPが2016年11月に発表したものだ。

製造はカナダのODMベンダーであるCelestica社。OSは、ホワイトボックススイッチ向けOSも提供するCumulus Networksがサポートしている。通信事業者の関心も高く、昨年中にオレンジやボーダフォン等がフィールドテストを実施している。

そして、そのVoyagerの後継を狙って台湾ODMベンダーのEdgecore Networksが2017年12月に発表したのがCassiniだ。NTTエレクトロニクス、Acacia Communications等と共同開発したもので、こちらも昨年にNTTと中華電信(台湾)が行った光伝送実験で用いられるなど、すでにテスト導入が始まっている。

Edgecore Networksの光パケットトランスポンダ「Cassini」。200Gbpsの伝送能力を持つDSPモジュールを最大8つ搭載可能で最大容量は1.6Tbps
Edgecore Networksの光パケットトランスポンダ「Cassini」。
200Gbpsの伝送能力を持つDSPモジュールを最大8つ搭載可能で最大容量は1.6Tbps

機能を分割し「再合体」Voyager/Cassiniの導入メリットは、ホワイトボックススイッチと同じだ。

既存製品に比べて価格が安く、ハード/ソフトが分離しているため用途に応じてソフトウェアを選択できる。ハードだけを高性能なものに入れ替えたり、ハードはそのままで別の機能を持つソフトに載せ替えたりといったことが柔軟に行える。

そして、もう1つ重要なポイントがある。光伝送装置の「機能分割」によるメリットだ。

光伝送装置はトランスポンダ(光伝送の送受信信号とクライアント側の信号を変換する)やMUX/DEMUX(データの多重分離を行う)、ROADM(光信号の挿入/分岐を行う)等で構成される。従来は図表の上側のように、これら複数の機能が一体型で提供されてきたが、製品ライフサイクルが長いため最新の技術を活用しにくいという課題があった。

図表 光伝送装置の変革
図表 光伝送装置の変革

特に問題なのが、光伝送部(ROADMやMUX/DEMUX、AMP)と、半導体技術で作るトランスポンダ部で技術進歩の速度に差があることだ。そこで後者を切り離し、同じく性能進化が速いL2/L3スイッチと合体させる動きが出てきた(図表中の赤)。Voyager/Cassiniはこれに当たり、「光パケットトランスポンダ」と呼ばれる。

性能が高いCPUやASICが登場した段階で光パケットトランスポンダを入れ替えれば、ユーザーは常に最新の技術を使えるようになるわけだ。

月刊テレコミュニケーション2018年5月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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