ワイヤレスジャパン 2018/ワイヤレスIoT EXPO 2018 基調講演レポートKCCS松木氏が語った「Sigfoxに取り組むべき5つの理由」

「Sigfoxは、ニッチだが膨大なポテンシャルを持つMassive IoTに特化した通信技術。パートナーの方々とともに、この手付かずのフロンティアを切り拓いていきたい」。KCCSの松木憲一取締役は講演で強い意欲を見せた。パートナーコミュニティが主役となるビジネスモデルもSigfoxの大きな魅力だという。

「あなたがSigfoxに取り組むべき5つの理由」――。京セラコミュニケーションシステム(KCCS)でSigfox事業を担当する松木憲一氏は、講演タイトルにやや刺激的な副題を付けた。

「今年3月末にSigfoxのサービスエリアは人口カバー率65%に達した。パートナー数はすでに297社、契約回線は100万を超えている」。松木氏は開業1年3カ月を経たSigfoxの実績をこう説明したうえで、「しかし、我々が目指している“すべてのモノが『つながる』新たな未来へ”という観点からするとまだ道半ばだ」と続けた。

「あなたがSigfoxに取り組むべき5つの理由」という副題には、「より多くの方に、Sigfoxの本質を知ってもらい、一緒にIoTビジネスに取り組んでいただきたい」というメッセージを込めたという。

京セラコミュニケーションシステム 取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長 松木憲一氏
京セラコミュニケーションシステム 取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長 松木憲一氏

松木氏が、Sigfoxに取り組むべき理由の「その1」として挙げたのが、「KCCSがSigfoxのオペレーター」であることだ。

京セラの情報システム部門が分離・独立する形で1995年に発足したKCCSは、ICT分野で豊富な経験を有している。特に先端技術には意欲的に取り組んでおり、「5年ほど前には、ウェアラブルグラスを使って、工場の中でエンジニアが仕様書を参照できるシステムの開発にも取り組んでいた」という。「この頃からM2M、今で言うIoTには大きなビジネスの可能性があると確信していた」と松木氏は明かす。

そうしたなか、KCCSはバルセロナで開かれた2015年のMobile World Congressで仏Sigfox社と出会い、これを契機に日本でSigfox事業を展開することになる。

KCCSは、主力事業の1つとして携帯電話の基地局建設を手がけており、ネットワーク構築ビジネスの知見を持っていたこともSigfox事業への参入を決断する大きな要因となったという。

「ICTとネットワークインフラの双方で豊富な経験を持つKCCSがオペレーターであることは、企業がSigfoxを用いてIoTビジネスに取り組む際の大きな判断材料になる」と松木氏は訴えた。

さらに、KCCSが京セラグループの一員であり、堅実なビジネスを行ってきていることも、「多額の投資を必要とし、回収も長期にわたる通信事業を手がけるうえで、ポジティブな評価を得られるのではないか」と述べた。

手付かずのフロンティア「Massive IoT」を狙う松木氏が講演で大きな時間を割いたのが、取り組むべき理由の「その2」。Sigfoxのターゲット市場は、「ニッチだがポテンシャルは膨大」であるということだ。

KCCSが「1回線あたり年額100円から」という破格の料金で展開する広域IoT通信サービスの市場には、SIer、携帯電話事業者、MVNOなどが次々と参入。「三つ巴、四つ巴の価格戦争」(松木氏)の様相を呈している。

松木氏は「通信仕様が異なるので単純に価格を比較しても意味がない」としながらも、「Sigfoxの料金は月額に直すと8円程度、現時点では最も競争力がある」とした。

さらに、松木氏が強調したのが「決して我々は戦略的な値付けで、低コストをうたっているのではない」という点だ。「Sigfoxが狙っているIoTのポジショニングが戦略的であり、その当然の帰結として低価格になっている」という。

では、Sigfoxはどこにポジショニングをしているのか。松木氏は真ん中に氷山を描いたスライドを用い、「今のIoT市場は氷山の一角に過ぎない。我々が狙っているのは水面の下に広がるMassive IoTの世界だ」と語った。

今のIoTは氷山の一角、水面下には巨大なMassive IoTのマーケットが広がる
今のIoTは氷山の一角、水面下には巨大なMassive IoTのマーケットが広がる

Massive IoTとは、「誰もネットワークにつながることを想定していないようなモノをネットにつなげるIoT」のこと。松木氏は一例として、オフィスの置き菓子が切れそうになると、ボタンを押して発注するシステムがSigfoxで実現されていることを紹介した。

水道メーターやガスメーターも、Sigfoxによってネットワークにつながりはじめた。さらに松木氏は「技術的な課題はあるが、薬の包装に『使い捨て』の通信モジュールを組み込み、高齢者の飲み忘れを防ぐシステムの実用化も期待されている」と語った。

これらは、1つ1つは規模の小さいニッチなマーケットだが、その広がりは無限といってよい。松木氏はさらに、Massive IoTではAIとセンサーを組み合わせて、「これまで認知できると思われていないことをネットに認知させる」ことも想定されていると指摘し、「こういう世界を我々はSigfoxで開拓していこうとしている」と意欲を見せた。

日用品をネットにつなぐMassive IoTでは、搭載される製品の寿命と、バッテリーの寿命がほぼ同じという高い省電力性が求められる。また、どこで使われるかわからないため、広域のエリアカバーも必要だ。

こうしたニーズに特化してペイロードを12バイト、通信速度は100bpsに抑制。それと引き換えに、広域エリアの効率的なカバーと、通信コストの大幅な低廉化を実現したのがSigfoxだという。

「年額100円からという料金設定は、決して戦略的なものではない。広域、省電力、そしてローコストというSigfoxの特性を生かし、Massive IoTという手付かずのフロンティアに切り込んでいきたい」

エリア整備、グローバル展開、パートナーコミュニティも魅力にSigfoxに取り組むべき理由の「その3」は、Sigfoxは「これからが旬」であることだ。

松木氏は、Sigfoxのサービスエリアについて、「6月末には人口カバー率70%程度になる。そして、10カ月後の2019年3月には85%、22カ月後の2020年3月には99%に広がる」と説明。

そのうえで、「今からサービスの企画・開発を始めると、完了する頃には人口カバー率85%のエリアが整備されている。さらに全国展開しようする頃には人口カバー率は99%だ。IoTのアイデアや技術、お客様をお持ちの方がSigfoxに取り組むとしたら、今が絶好のタイミングだ」とした。

10カ月後にはSigfoxの人口カバー率は85%に、22カ月後には99%となる
10カ月後にはSigfoxの人口カバー率は85%に、22カ月後には99%となる

取り組むべき理由の「その4」は、SigfoxならIoTサービスをグローバル展開できることだ。

Sigfox社は、国・地域ごとに1社のオペレーター(日本ではKCCS)と契約し、同じ通信方式でグローバルなIoTサービスを展開している。現在45カ国でネットワークが提供されており、年内に60カ国で利用が可能になる。

そのため、日本で開発したデバイス、アプリケーション、ソリューションは海外にも展開できる。KCCSは世界各地のSigfoxオペレーターと密な関係を築いており、海外でのサービス展開にあたってKCCSがサポートできる点も大きな魅力だと松木氏は述べた。

Sigfoxの周波数は地域によって異なるため、その通信仕様も4つに分かれているが、すでに全仕様に対応できる通信モジュールが発売されており、ルイ・ヴィトンがこれを用いて、旅行カバンの盗難防止・追跡サービスを提供しているという。

Sigfoxを利用することでIoTサービスをグローバルに展開できる
Sigfoxを利用することでIoTサービスをグローバルに展開できる

最後に、取り組むべき理由の「その5」として松木氏が取り上げたのが、Sigfoxでは「パートナーコミュニティが主役」となっている点だ。

KCCSのパートナーは、5月23日時点で297社。デバイス、アプリケーション、インテグレーションなどのカテゴリに重複登録しているケースがあるため、登録総数は400を超える。KCCSは回線サービスの提供を事業領域としており、チップセットやデバイス、アプリケーションの開発やIoTサービスの展開は、これらのパートナーに委ねられている。

パートナーコミュニティが主役となるビジネスモデルがSigfoxの大きな魅力だという
パートナーコミュニティが主役となるビジネスモデルがSigfoxの大きな魅力だという

「パートナーコミュニティが主役となって、優れたアイデア、技術、やる気のある企業をサポートし、新たなサービスやビジネスを生み出していきたいと我々は考えている。そして、もうすでに多くが実現されている」

そして、「人と人の御縁が連鎖、つながっていくことでソリューションが生まれるというのが、IoTの真髄。KCCSでは、そういう御縁の連鎖ができるようパートナーコミュニティを強力に支援していく」と語り、松木氏は演壇を降りた。

●IoTネットワーク(Sigfox)の詳細はこちら→ https://www.kccs.co.jp/sigfox/index.html

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