ワイヤレスジャパン 2018事前特集データ分析の老舗、SASが提案するIoT時代のデータ活用 はじめの一歩を踏み出す前に考えるべきポイントは?

IoTの普及によって生み出される膨大な量のデータを活用し、そこから得られる知見を元に業務やビジネスを改善したいと考える企業が増えている。そんな企業がまず直面する課題とは?

AIをフル活用して企業の価値を最大化し、競争力を高める「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)に取り組む企業が増えている。

DXというと、クラウドやモバイルデバイスといったインフラ・ハード面に注目が集まりがちだが、実は最も重要な要素が、目には見えない「データ」だ。いわゆる基幹システムで扱われてきたデータだけでなく、IoTの普及によって生み出されるデバイスからのデータ、あるいはソーシャルネットワークを流れるコンシューマーの声など、日々生成される大量のデータを活用し、そこから得られる知見を元に業務やビジネスを改善して新たな価値を実現することがポイントだ。

30年以上に渡ってデータ活用やビッグデータ分析の領域でソリューションを提供してきたSAS Institute Japan(SAS) ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT&Advanced Analyticsグループ グループマネージャーの松園和久氏によると、こうした利点を認識し、企業トップ自ら号令をかけ、データ活用に力を入れる企業が増えてきたそうだ。同時に、逆のアプローチだが、例えば製造現場で品質向上のためにあらゆる手立てを打った末に「あと一歩、何とかして不良品の率を減らしたい」と策を求め、データ分析にたどり着く場合も多いという。

ただいずれの場合も問題は、「必要性は分かったが、どうやってデータ分析を実現するか」だ。データは企業のそこかしこにあり、しかも日々溜まりつつある。それをどのように集め、どんな手法で分析すればいいか、そもそもどこから手をつけたらいいかが分からずに戸惑うケースは少なくない。「これまでデータ分析に取り組んだ経験のない会社では、『どんなデータがあればいいのか』『どんな分析ツールや手法が必要なのか』と、何をそろえればいいのかという段階で立ち止まってしまうケースが多いように思います」(松園氏)

データ準備から分析を活用したDXの実現までを支援これに対しSASでは、データ分析の基盤環境やコンサルティングサービス、データ分析に携わる人材育成支援といったさまざまな側面から、企業が直面する課題解決を支援してきた。例えば、製造業における品質解析の領域をとっても、顧客それぞれのニーズに合わせたやり方を提案できる体制を整えている。

長年にわたって顧客のデータ分析業務を支援してきた経験を踏まえ、松園氏は「データ分析というと、課題に対する答えが『スマート』に得られるものというイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、実際にはそれは難しいと説明する場合もあります。むしろ、泥臭くやっています」と述べた。

確かに、AI技術の発展にともなって、データから特徴量を得る為の方法は増え、機械学習アルゴリズムにおける、最適なパラメータの組み合わせを選ぶといった作業は自動化が可能になり、SASもそうしたテクノロジを提供している。だが、「残念ながら、そこに取り込む前段階のデータについては、まだまだ泥臭い作業が必要になることが多いです」という。そこで求められるのは業務知識だ。

「データサイエンティストと呼ばれる統計知識に強みがある人が単独で分析を進めるよりも、業務知識を持ち、データを見て『これは業務上ではこういうことになる』『このデータの値が低くなっているのは、業務の実際とフィットしていない』といった判断ができる方と一緒に分析作業をする方が、いいものが出来上がります。そのために、お客様と綿密に会話しながら擦り合わせ、根気よく分析テーマに応じたデータの吟味と、そのデータを理解する作業が必要です」。こうした作業を経て、どんなデータを用意するべきかというところさえできあがれば、その後の応用は柔軟にできるという。

こうしてデータ活用に足を踏み入れた後も、いくつか留意すべきポイントがあるそうだ。特にIoT時代の、”データをつなぐ”ことが増えて、頻繁にぶつかる課題は、データの「標準化」だ。「IoTによってさまざまなデータが取れるようになりましたが、異なる時間間隔、異なる単位で取り貯めたデータを使う前に、それらを整理する作業が必要です。データ同士をどのようにつないでいくかは簡単なように思えますが、意外と面倒なことが待ち受けており、息切れしてしまう会社も少なくありません」

そこでSASでは、いわゆる分析アルゴリズムの開発ステップに入る前のデータの準備段階においても、いくつかのアプローチを紹介しながら顧客を支援しているという。「お客様単独で進めようとする中で、立ち止まってしまっているところを、SASは膝を突き合わせて、過去の事例や、海外でのベストプラクティス等を取り込みながら、堅実な方法をご案内しています」

こうしてデータ分析に取り組み始め、これまで上手に活用できていなかったデータを探索し、「実態はこうだ」と確認できるようになると、漠然と肌感覚で持っていた仮説を確かめたり、あるいは従来見落としていた要素に気付いたりと、過去の「知見」と「実績」を擦り合わせられる。これだけでも、大きな前進だ。ただ、データを活用してのDXを実現し、本質的な変化をもたらすには、もう一歩踏み込むことが必要だ。

「データは本来、業務の中で意思決定を支援するためのものです。例えばIoTならば、次に設備のメンテナンスが必要なタイミングはいつになり、そのタイミングまでにどんな修理部品を用意しておく必要があるのかとか、もし故障があればどれくらいの範囲に影響する恐れがあるから、このくらいメンテナンス要員を用意しておくべきかとか……つまり、データは将来に向けたプランに生かせますし、生かしたいはずなんです」

単に現状を見える化するだけでなく、デバイスが生み出すデータをリアルタイムに取り込み、分析することで、トラブルの原因、あるいは顧客を引きつけるメカニズムが把握できる。そこが分かれば、「われわれは次にどういう手を打つべきか」も適切に判断できる。おそらく、今は見える化で満足している企業も、データ分析が成熟していけば、自ずとこうした効用に気付くだろうと松園氏はいう。

IoTデータを意思決定に活用する為の仕組みこれが10年前ならば、さまざまな投資が必要だっただろう。だが、世の中のAI活用のトレンドに加え、ストレージ単価の低下やクラウドサービスの普及によって、多くのリソースを低コストで利用できる環境が整ってきた。SASも、そうした変化を活用して分析を後押しするソフトウェアをそろえ、提供している。

「データ分析というとアルゴリズムばかりに目が行きがちですが、前述の通り、実はデータの準備がとても大変ですし、分析した後に、結果をどのように業務に使うかもAIとして、自動化した意思決定を支援する仕組みにしようとすると、システム化が求められます。そこまで含め、一つの仕組みとして実現できるソリューションでないと、DXの実現は難しいと考えます。これらの要素を包含してシステム化を支援できるのはSAS以外にはないと思います。また、増加の一途をたどる膨大なデータをきちんとスピーディに処理できる分析エンジンを備えていることも特徴です」

データの量は増加の一途をたどっている。製造業の設備装置ならば単なる運転データだけでなくそのときの環境データも含めて収集したり、電力ならば過去は1カ月に1回の検針で済ませていたものを、スマートメーターにより30分単位でデータを収集したりと、集められるものは何でも集める、という勢いだが、分析ソフトウェアがそれに耐えられなければ意味はない。

「ExcelやGUIで使える分析ツールも多々あります。しかし、基幹系の注文データからIoTで分単位、秒単位で集まるデータに至るまで、1つの企業の1年分の全データ、全トランザクションをまとめて傾向を把握したいとき、それを回しきれる分析基盤はSASしかないと考えています」

事実、ウエスタン・デジタルのように、膨大な製造工程におけるIoTデータにAIを活用して製造工程の早い段階で不良品を見つけ出し、歩留まりの改善、ひいては収益の向上につなげているケースもある。国内外の多くの企業が、SASの分析プラットフォームを活用して後に続いているそうだ。松園氏は「あとはやるか、やらないかだけです。もしやるなら、PDCAサイクルを一日でも早く回し始める方が、よりよい果実が得られます」と述べている。

はじめの一歩を踏み出そうとしている企業が注意すべき点、それは「昨今のAI活用の動きの中で、分析アルゴリズムばかりに目を向けがちになっている点」だと、松園氏は警鐘を鳴らす。「高度な分析アルゴリズムがあっても、データを正確に理解することなしに、意味のある結果は生まれません。また分析結果を業務で活用できる仕組み化まで持っていけなければ、DXの実現には至らない、と考えます。データ活用の一連のプロセスとそれを運用していく姿を描くことが必要」と語る。

2018年5月24日(木)東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレスジャパン/ワイヤレスIoT EXPO」の基調講演では、それでもまだ悩んでいる企業が一歩踏み出すためのヒントが紹介される予定だ。ぜひ参考にしていただきたい。

★5月24日(木)基調講演<2> 14:40-15:20
東京ビッグサイト会議棟1階 レセプションホールB
『IoTの実装・運用のためのSASアナリティクス・ソリューション』
http://expo.ric.co.jp/wj2018/jizen/seminar.php#76

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