Wi-Fi Meshに注力するクアルコム――米市場で家庭向けネットワーク機器が急伸

マイナーな存在であったWi-Fi Meshのマーケットが急速に立ち上がってきている。トリガーとなったのはクアルコムが開発した「Wi-Fi SON(自己組織化ネットワーク)」技術。米国ではホームWi-Fi機器の4割がMesh対応製品となっており、その9割以上にクアルコムのチップが採用されている。日本でもバッファローが製品化に乗り出した。

クアルコムは2018年1月31日、コネクティビティ、ネットワークビジネスを担当するシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのラフール・パテル氏の来日を機に、Wi-Fiを中心としたコネクティビティ事業戦略についての記者説明会を都内で開催した。

プレゼンテーションの冒頭でパテル氏は、クアルコムのコネクティビティビジネスの全体像について説明。ライセンスバンド向けの4G/5G、アンライセンスバンドで運用されるWi-Fi、Bluetooth、NFCなどの両分野で無線技術の革新に力を注いでおり、これらをセキュリティやコンピューティング分野の技術と組み合わせてプラットフォームとして提供するために必要な技術すべてを持っていることが、クアルコムのビジネスの大きな強みとなっていると述べた。

クアルコムのコネクティビティプラットフォームを構成する技術要素
クアルコムのコネクティビティプラットフォームを構成する技術要素

アンライセンスバンド向けの無線技術においては、クアルコムはWi-Fiに強く、チップの出荷数量、金額、対応できる製品分野のいずれにおいてもトップの位置にあるという。主力のモバイル向けSoCの多くにWi-Fiが登載されていることがその大きな要因だが、もう1つパテル氏が強調したのが、昨年初めからクアルコムが展開しているホームネットワーク向けのWi-Fi Mesh対応製品が大きな伸びを見せていることだ。パテル氏は「2017年初頭に5%程度だった家庭向けのWi-FiネットワークにおけるWi-Fi Mesh対応機器の割合は現在40%強となっており、その90%以上にクアルコムのチップが採用されている」と説明した。

クアルコムのWi-Fi Meshプラットフォームの特徴
クアルコムのWi-Fi Meshプラットフォームの特徴

Wi-Fiを用いたMeshネットワークは、設定に手間がかかる、通信速度に制約が生じるなどの理由からあまり普及してこなかった。突破口となったのが、クアルコムが開発したWi-Fi SON技術だ。これによりアクセスポイントとルータを配置するだけで最適な経路や利用周波数帯が自動的に設定され、広範なエリアで安定したセキュアな通信が可能になるという。IEEE802.11acの登場で通信速度の制約も解消されてきた。

クアルコムのチップを用いてWi-Fi Mesh対応製品を展開しているベンダー
クアルコムのチップを用いてWi-Fi Mesh対応製品を展開しているベンダー

日本でもすでに海外メーカーのWi-Fi Mesh対応製品の展開が始まっているが、国内勢ではバッファローが製品開発を進めている。クアルコムでは「米国ほど広い家が多くない日本では、ホームネットワーク以外のIoT分野から普及が進む可能性もある」と見る。

パテル氏は、Wi-Fi Meshの大きな特徴の1つに通信事業者の利用に耐え得る高い信頼性を実現している点があるとした上で、「すでにアメリカのコムキャスト、カナダのベル・カナダがWi-Fi Meshを利用したサービスを提供している。日本でも同様の展開が進むことを期待している」と語った。

クアルコムのWi-Fi Meshと他社のプラットフォームを連携させたソリューションも登場してきている。1月初旬にラスベガスで開かれたCES2018では、ASUSがマイクロソフトのデジタルアシスタントCortanaとクアルコムのWi-Fi Meshを利用した初の音声対応メッシュネットワークシステム「Lyra Voice」を発表。さらにWi-Fiを用いた動態検出技術を持つオリジンワイヤレスやコグニティブシステムズ、IoTインフラ管理のルネラがWi-Fi Meshを活用するプランを明らかにしている。

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