<特集>5G時代の新ビジネス創出戦略 第2回5Gで“超現実”の感動体験――ポストスマホ時代のビジネスチャンスとは?

スマホの次に世の中を変えるイノベーションは何か――。ポストスマホをめぐる議論が盛んだが、その揺り籠となるのは、やはり5G。VR/MRやAIスピーカーなどにより、“超現実”の感動体験が実現する。

年間約3000万人が訪れる、日本屈指の観光スポットである東京・浅草。その東側、隅田川の先に目を向ければ、こちらも年間約3000万人が訪れる東京スカイツリータウンの中心施設・東京スカイツリーの巨大な姿が目の前に広がる。浅草と東京スカイツリーは、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)でわずか1駅。徒歩でも15分ほどの距離にある。

伝統・文化と先進性が融合した日本のシンボルタウンを目指し、東武グループは浅草・東京スカイツリーエリアの一体化に向けた開発を現在進めているが、そのための“手段”の1つとして期待されているのが5Gだ。

東武鉄道とNTTドコモは今年5月、東京スカイツリータウンにおいて、5Gを使ったサービスを体験できる「5Gトライアルサイト」を開始した。

「どんな新しいサービスが実現できるかはまだ分からないが、5Gが画期的な技術であることは間違いないと思っている。我々は通信事業者でもVRのメーカーでもない。そのため、5Gのトライアルが行える場所を提供することで、いろんなアイデアや技術を持っている方を惹きつけたい」

東武鉄道 経営企画本部 経営企画部 課長の岩澤貞裕氏は、5Gトライアルサイトの目的をこう説明したうえで、次のように語る。

「5Gのような新しい技術を組み合わせることで、新たな体験の仕方が観光地で可能になり、プラスαの感動を生み出せるかもしれない」

5Gの活用により、観光というリアル空間での体験を、もっと豊かにできるのではないかと考えているのだ。

移動空間が5Gで変わる東武鉄道がNTTドコモと共同で取り組んでいる試みの1つに、列車内のエンターテイメント空間化がある。

「これまでの鉄道は、どちらかというと、A地点からB地点に行くための手段だった。しかし、移動中も楽しむことができる、乗ること自体が目的になる─。そんな移動時間や空間を提供していくことが交通事業者には求められている」

両社は、4月21日から運行を開始した新型特急「リバティ」において、5Gを使用して4Kの高精細映像を8台のタブレット端末に同時配信するなどのデモやトライアルを実施した。

図表1 列車など高速移動体における5G活用イメージ[画像をクリックで拡大]図表1 列車など高速移動体における5G活用イメージ

5Gの要素技術の1つに、超多素子アンテナを活用したMassive MIMOがある。5G用に新規に割り当てられる見込みの周波数は、現在4Gで利用されている帯域よりも高い周波数だ。このため電波が遠くに飛びにくい。

だが、超多素子アンテナを使って特定方向に電波を集中させるビームフォーミング機能を使えば、「高い周波数でも1kmや2kmくらい飛ばすことが技術的には可能になっている」とNTTドコモの奥村氏は説明する。さらに高速移動中の端末を追尾することも可能で、「昨年、富士スピードウェイで行った実証実験では、28GHz帯を使って、時速150kmで走る移動体に対して、ビームがちゃんとトラッキングできた」。

今、多くの人が移動中、スマートフォンで“暇つぶし”をしている。しかし、列車やバスなどの移動体が、5Gにより超ブロードバンド化されれば、例えば車内のディスプレイに4K映像のコンテンツを流すなども可能だ。単なる“暇つぶし”ではない、今までにない充実した移動体験を提供可能になる。

月刊テレコミュニケーション2017年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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