本格的なIoT時代を前に、デバイス1台あたりの送信頻度が少なく、1回あたりのデータ容量も小さい「低トラフィックIoT」を対象にした通信サービスに注目が集まっている。
NTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)は7月3日、携帯電話回線(GSM/3G/LTE)を使った企業向けネットワークサービス「Arcstar Universal One モバイル グローバルM2M」において、「100円SIM」でこの分野に参入した。
100円SIMという名称が示すように、1回線あたりの通信量が1MB以下であれば、月額100円(税抜、初期費用として500円、1MB超過ごとに100円が別途必要)という安価な料金で利用できるのが大きな特徴だ。
自動販売機や家電製品の遠隔監視、子供や高齢者の見守りサービス、宅配の追跡サービスなど、低トラフィックIoT分野の用途は幅広い。「従来、IoT向けのモバイル通信サービスといえば1カ月のデータ容量が30MBで月額500円程度のプランが主流だった。だが、『データ容量は数MB程度でいいから、もっと安いプランが欲しい』という多くの声があり、そのニーズに応えた」とネットワークサービス部オープンネットワークサービス部門主査の井上北斗氏は説明する。
(左から)ネットワークサービス部 オープンネットワークサービス部門 主査の井上北斗氏、同部 販売推進部門 MVNO担当の青木貴史氏、同部 販売推進部門 M2M/IoT担当の村田一成氏 |
閉域網とマルチキャリアに強み100円SIMが月額100円で利用できるのは、日本や中国、香港、インド、米国、フランス、ドイツなど25の国・地域。いずれも日系企業が多く進出している国であり、まず国内向けにIoTサービスを提供した後、グローバルにも展開したいといった企業のニーズに応えることができるという。
低トラフィックIoT向けの格安SIMサービスは、SORACOMの「SORACOM Air for セルラー」やIIJグローバルソリューションズの「Vodafone IoT SIM」など、今年に入って各社から相次いでリリースされている。1MB利用時の月額利用料金はSORACOMが0.9ドル(日本円で約112円)、IIJが190円だ。100円SIMが最安なものの、圧倒的に安いとまでは言えないが、実は100円SIMの差別化ポイントは料金だけではない。
NTTコムは、①閉域VPNへの接続による安全性、②マルチキャリア対応による継続性も強みに挙げる。
図表1 NTTコムの提供するIoTソリューションイメージ
①については、IoT環境を構築する際、自社の生産設備や機械、製品をネットワークに接続することで外部からサイバー攻撃を受け、企業の機密データや個人情報が漏えいするリスクが高まることが、企業にとって不安の種だ。他社のサービスはインターネットを経由してクラウドに接続したり、あるいは携帯電話網と自社ネットワーク設備・基盤との接続部分にインターネットVPNを利用している。他方、NTTコムは携帯電話網から直接インターネットを介さず閉域VPNに接続し、さらに、自社の「Enterprise Cloud」やマイクロソフトの「Azure」、アマゾン・ウェブ・サービスの「AWS」などのクラウドサービスともセキュアな閉域接続を実現している。
②については、国内ではNTTドコモとソフトバンクというように、同一国・地域内において1枚のSIMで複数の携帯キャリアの回線に接続することができる。接続している携帯キャリアのネットワークで障害が発生したり圏外になった場合、他のキャリアに自動で接続されるので、通信が途絶する可能性を減らせる。日本ではあまり関係ないかもしれないが、東南アジアのように都市部以外はキャリアごとにつながる地域が限定されている国で効果を発揮するという。