周波数検討WGが中間とりまとめ案――移動通信などに1.5GHz幅を確保、700/900MHz帯の割当プランは5案併記 

総務省は、移動通信など急激なトラフィックの増加が見込まれる分野に2015年までに300MHz幅、2020年までに1500MHz幅を新たに割り当てる方針を固めた。2010年8月26日に開催された「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」第7回会合で了承された「中間とりまとめ案」に盛り込まれたもので、「今後10年間に500MHz幅をモバイルブロードバンドに割り当てる」としている米国の「国家ブロードバンド戦略」を凌駕する、大胆な周波数開放計画となる。

WGは8月31日に開かれる親委員会「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース電気通信市場の環境変化への対応検討部会」13回会合に中間とりまとめ案を報告、さらに検討を進めた上で10月を目途に最終案を策定する。総務省はこれを受け11月末に新たな「周波数再編の実施方針(アクションプラン)」を策定。日本の電波政策は「大転換期を迎える」(内藤正光総務副大臣)ことになる。

同WGは、総務省が検討中の700/900MHz帯の割り当てプランが海外の周波数割り当てと整合しておらず、ユーザーの利便や国内産業の競争力向上の面で懸念があると指摘されたことを受け、5月に発足したもの。名称が示す通り、議論の対象は700/900MHz帯にとどまるものではなく、移動通信分野への周波数割り当て施策、関連産業の国際競争力確保など広範な分野に及んでいる。

今回の中間とりまとめ案では、主要テーマである700/900MHz帯については、700MHz帯と900MHz帯をペアとして40MHz×2の帯域を確保する総務省原案とともに、意見公募やヒアリングなどで通信事業者やベンダーなどから寄せられた「見直し案」をベースに700MHz帯で4つ、900MHz帯で1つが「モデル」として併記された。これらの中から実現可能性や時期、コストなどを評価した上で、導入プランが絞り込まれることになる。

700MHz帯のモデルは(1)当初割り当て予定の帯域内で15MHz×2を設定するもの、(2)米国のバンドプランに準拠して20MHz×2を設定するもの、(3)検討中のアジア太平洋地区の標準プラン(AWF案)に準拠した形で35MHz×2を設定するもの、(4)TDD方式に割り当てるものの4つ。900MHz帯は、欧州のバンドプランに合わせた形で15MHz×2を設定するものだ。700MHz帯と900MHz帯の見直し案の組み合わせは4つとなるので、総務省原案を含め5つの選択肢から1つが選ばれることになる。

バンドプランの検討は、情報通信審議会 情報通信技術分科会 携帯電話等周波数有効利用方策委員会と共同で行われることになるものと見られ、9月2日には今年4月以降中断していた同委員会の会合が予定されている。

中間とりまとめでは、700/900MHz以外でも、1.7GHz帯、2.5GHz帯、3~4GHz帯などの移動通信への新たな割り当てを提言。家庭・オフィスのブロードバンド環境の整備での利用が想定されている60GHz帯の拡張や自動車の衝突防止システムの実用化を目指す700MHz帯、79GHz帯高分解能レーダーの速やかな実用化を目指すべきとするなど、広範な分野での電波利用の推進を求めるものとなっている。

もう1つ注目されるのが、周波数の移行・再編を速やかに行うためには、移行にかかわるコストを移行後の周波数利用者が負担、あるいは電波利用料を活用するなどの意見が多く寄せられたとして、「法制度の導入を含めた周波数移行・再編を支援する仕組みが必要」としたことだ。これは市場原理を一部取り入れることで、周波数再編を円滑に進めようとするものといえる。

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