人工知能は「キャリアネットワーク」をどう進化させるのか?

様々な産業界に広がる人工知能(AI)の活用。キャリアネットワークでも、故障・障害の予兆検知や通信品質の向上、そして運用自動化に役立てようという動きが進んでいる。その最新動向をレポートする。

多くの産業でAIを活用する取り組みが行われているが、キャリアネットワークでも同様に、人手では対処が難しかった課題をAIの力を借りて解決し、ネットワークの運用を自動化しようとする研究開発が進んでいる。

SDN技術の導入によってキャリアネットワークの運用は自動化の道を歩み始めたが、さらに、AIによって故障・障害の予兆を検知したり、需要変動を予測してネットワークが自律的に対処できるようになれば、“オペレーションフリー”な自動運転型ネットワークの実現も見えてくる。

通信事業者にとってネットワーク運用コストの増大は大きな課題だが、AIはそれを解決する鍵となるのだ。

すでに、現実的な課題に対してAIで解決策を導き出そうという取り組みも行われている。KDDI研究所が開発した、AIを活用した自動運用システムがその好例だ。

NFV化でネットワーク運用に新たな課題世界中の通信事業者がSDN/NFVの導入を進めているが、キャリアネットワークの仮想化/クラウド化の進展によって新たな課題も持ち上がっている。運用保守の複雑化だ。KDDI研究所の統合コアネットワーク制御グループでグループリーダーを務める林通秋氏は「NFV、仮想化技術が使われるようになると、これまでなかったような異常やサイレント障害が増えると予想される」と話す。

KDDI研究所
(右から)KDDI研究所 統合コアネットワーク制御グループ グループリーダーの林通秋氏、研究マネージャーの宮澤雅典氏、研究主査の黒木圭介氏

NFV環境では、汎用ハードウェアとハイパーバイザーで構築された共通仮想基盤上で、複数の仮想化されたネットワーク機能(VNF)を稼働させる。そのため、ハードウェアに起因する異常が発生した場合、その影響範囲は従来に比べて大きくなる。また、ハードウェアとネットワーク機能が一体化していた従来環境と比べて、故障の箇所と原因、障害の影響範囲を特定することも難しくなる。

障害の原因を特定してから復旧プランを策定し、ハードウェア交換の作業を行う「事後保全型」の運用では、余計に人手と時間がかかることが予想されるのだ。NFVによって設備コストの削減は期待できても、反面、運用の複雑化による運用コストの増大が懸念される。

この課題を解決するための第1のチャレンジは、事後保全型から「定期保全型」への転換だ(図表1)。

図表1 仮想化時代に向けた運用スタイル
図表1 仮想化時代に向けた運用スタイル

例えば、ハードウェア故障の際にクラウド上の予備リソースを使って自動的に再構成(オートヒーリング)を行うことで、障害対応を自動化し、サービス提供を継続する。壊れたハードウェアは定期的に交換する形態に変えることで、安定性を維持しながら保守コストの削減も図ろうという狙いだ。

月刊テレコミュニケーション2016年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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