米国内の2カ所のデータセンターにSDNを導入し、2014年に稼働したインテル。その目的は、仮想化技術を用いることによって、社内のユーザーに対して迅速にネットワークを提供できるようにすることだった。
同社が発行する「IT@Intelホワイトペーパー(2014年5月)」によれば、SDN導入前は、ネットワークのプロビョニング作業自体に4~6時間、起動から停止まで含めるとプロセス全体に13日間かかることもあったという。そこで、利用者がセルフサービス型でオンデマンドに仮想ネットワークを設定して利用できる環境を実現し、俊敏性の向上を狙ったのだ。
同社発行のレポート並びに、日本法人の広報担当者への取材を元に、同社におけるSDNのメリット、直面した課題とその解決法を紹介する。
計画阻んだ「オーバーレイの宿命」14年に運用を始めたインテルのSDN基盤上では現在、7000VMが稼働している。同社全体で利用されているVM数から言えば、その規模は「かなり小さい」(広報担当)ものに留まっている。当初はデータセンター全体をSDN化する計画だったが、「パフォーマンスの問題が解決できず、特にオンデマンド性が必要な一部のシステムに限定したかたちで展開するという決断に至った」という。
その理由は、「オーバーレイ方式」を採用したことにあるとインテルは結論付けている。
同社は、既存のネットワーク機器はそのまま利用しながら、ハイパーバイザ上で稼働する仮想スイッチがトンネリングによって仮想ネットワークを構成するオーバーレイ方式のSDNを採用した。なお、ベンダー名は非公開だが、仮想スイッチもSDNコントローラもともにオープンソースではなく、ベンダー製の商用ソリューションを用いているそうだ。
導入前のテスト環境では安定稼働できることを確認していたものの、実環境へ展開する段階になって、オーバーレイ方式で大規模な環境を構築しようとすると十分な性能が確保できないことが判明した。そこで、データセンター全体をSDN化しようとした当初の計画を変更し、開発部門の一部が用いる7000VMの規模に限定して展開した。
ただし、規模は小さいと言えども、導入効果も認められている。
1つはコスト削減効果だ。既存のネットワーク機器をOpenFlow対応スイッチに入れ替える「ホップバイホップ方式」を採用した場合の試算と比べて、50%以上費用を削減できたと分析している。
また、現場である開発部門では、わざわざIT部門に依頼する必要なく、自らポータル画面を操作してネットワークの設定を行えば、即座に利用できるようになった。開発現場の俊敏性が向上したほか、IT部門もネットワーク設定作業の負荷から解放されたわけだ。