5G視野にNB-IoTへ注力する――5年後には30億のモノが携帯ネットワークでつながる

中国の大手通信ベンダーであるファーウェイが、携帯電話ネットワークでモノとモノとの通信を実現するセルラーIoT(モバイルIoT)のビジネスに本腰を入れてきている。その中核を担うのが3GPPで標準化が進められている新技術NB-IoTだ。無線ネットワーク分野のマーケティングを統括する邱恒氏に、ファーウェイのIoT戦略を訊いた。

――IoTの市場が大きな伸びを見せています。ファーウェイではこの市場をどう捉えているのですか。

 当社は、2025年までに1000億のモノがネットワークに接続されるようになると見ています。この市場は非常に大きなものになるでしょう。1000億の接続にはさまざまな通信技術が用いられることになると見られますが、当社はその中でも特に「セルラーIoT」――携帯電話のネットワークでIoTをサポートする技術に優先的に取り組もうとしているのです。

――セルラーIoTに注力するのはなぜですか。

 理由は大きく3つあります。

1つがカバレッジです。携帯電話網ではすでに全国、全世界をカバーするネットワークが整備されています。他のシステムで、これに匹敵するカバレッジを新たに実現するのは難しいと思います。

2番目の理由がセキュリティです。IoTは、家庭、企業と幅広い場面で使われますからセキュリティに不安があるようでは、普及は見込めません。携帯電話はアーキテクチャそのものがセキュアですし、運用を担う通信事業者も高い信頼を得ています。

最後が、エコシステムが強力であることです。携帯電話では、多くのベンダーがチップセットやデバイスを手がけていますし、IoTゲートウェイなども多く展開されています。セルラーIoTの技術規格は移動通信の標準化団体3GPPで作られていて、誰もが同じ基準で製品を作ることができます。規模が大きいのでコスト削減がしやすく、安価にサービスが提供できることも、セルラーIoTの大きな利点です。ユーザーにとって魅力的なサービスが実現できる可能性があるのです。

――主にどういった分野での利用を想定しているのですか。

 我々はセルラーIoTでより幅広い分野をサポートできると考えています。特に、3GPPで標準化が進められている新たな技術規格NB-IoTが実用化されることで、セルラーIoTのサポートできる領域は大きく広がることになると見ています。

有望な市場の1つが、農業分野です。無線を介して機器を制御したりセンサーで集約した温度や湿度などの情報を活用し、作業効率を大幅に向上させ作物の品質を高めることができます。

家庭の電気やガスの利用量をリアルタイムで収集できるスマートメーターもセルラーIoTの有力なターゲットです。ペットにセンサーを取り付けてどこにいるかを把握したり、輸送中の荷物が今どこにあるかをリアルタイムでモニターするトラッキングも期待の持てる分野です。監視カメラや自動車をネットワークに接続する手段としても広く使われるでしょう。我々は2015年末で、セルラーIoTで接続されているデバイス数は世界ですでに4億に達したと見ています。NB-IoTの登場により、2020年には接続数が7倍の30億になると考えています(図表1)。

図表1 セルラーIoTの市場規模
セルラーIoTの市場規模

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