【周波数検討WG第6回会合】700/900MHz帯の見直し、構成員にも「温度差」

総務省の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」の第6回会合が2010年7月29日に開催された。同WGは今後需要の急増が見込まれる移動通信分野への周波数配分のあり方について、海外のバンドプランとの整合性(ハーモナイズ)や産業政策など多様な側面から再検討を行っているもので、今年5月に「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」に設置された。特に、総務省が検討中の700/900MHz帯の割り当てプランを見直し、海外と整合させるかどうかが大きなテーマとなっている。

前回の会合からは、関係者ヒアリングや意見公募で寄せられた意見を踏まえ、(1)割り当て案を策定する上での検討事項の洗い出し、(2)周波数確保を加速化するための効率的施策など、タスクフォースへの提言のとりまとめが進められている。

今回の会合は、これまで関係者から意見を聴取してきた構成員が論点について意見を述べる形で進められたが、その発言から700/900MHz帯の割り当てプランの見直しに関して、構成員の間にも「温度差」があることが浮き彫りになった。

見直しに比較的肯定的なスタンスで意見を述べたのが、野村総合研究所上席研究員の横澤誠氏である。横澤氏は、見直し案を円滑に導入する手法として、周波数割り当てを2012年、2015年、2020年の3段階に分け、「700/900MHz帯単独ではなく今後割り当てが浮上するとみられる3.5GHz帯や1.7GHzなどを含めた『複数のパイ』をまとめて切り分けること」を提言。特に2012年時点での割り当てに関しては「後顧の憂いのないものにしなければならない」と強調。また、見直しにより移行が必要となる他システムについても技術的には移動通信に統合できる可能性があるのではないかと指摘した。

上智大学理工学部教授の服部武氏も、同様に「携帯電話全体の周波数を考慮した周波数割り当てが必要」とした上で、700/900MHz帯の見直しには、海外との干渉の問題の解消やRFIDの海外との共通運用などの利点があるという見方を示した。

逆に慎重な立場に立つのが、デンマーク国立オールボー大学CTIF日本研究所所長の大森慎吾氏である。大森氏は「海外のバンドプランとの整合性を確保することが必ずしも産業競争力に結びつくとは限らない」と指摘。その上で「国際競争力強化のために周波数配分の何が問題になるのか、本質的な議論が必要だ」とした。また個人的な見解とした上で、車の衝突防止システムの実用化を目指すITSに見通し外で使える700MHz帯を割り当て、これを世界に売り込んでいくことも必要ではないかとも述べた。

デジタルメディア協会理事の岩浪剛太氏も、海外のプランとの整合性について、「あたかも1つの国際規格があるがごとく言われているが、現実はまだそうはなっていない」と指摘。「アプリケーションを作る側にとっては日本が世界に先駆けてリッチなアプリケーションを世に出せる方がありがたい」として、最も早い時期にスムーズに入れられるプランは何かという視点も重要だとした。

700/900MHz帯の「総務省原案」は2012年7月の利用開始を想定しているが、海外とのハーモナイズ案を導入する場合、FPU(テレビ中継)やMCA無線などの他システムの移行が不可欠となり、調整や移行作業で利用開始時期が大幅に遅れる可能性がある。

WGのヒアリングでは、移動通信事業者やパナソニックから、これらの既存システムに一定の配慮を払うことで早期実用化を実現しようとする「現実案」がいくつか提示されており、これらの案が具体的に検討の俎上に上ることになりそうだ。

WGの主査をつとめる慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 委員長の徳田英幸氏は、最後に干渉を効率的にテストできるオープンな試験環境の整備を提言した。

WGでは、今回の構成員のコメントを踏まえ、次回会合までにタスクフォースに対する提言の大枠を固める。当初、7月目途とされていたタスクフォースへの報告は、8月になる見通しである。

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