巨大“10億台”市場に挑む――M2Mマーケットの可能性

人口の10倍あると見られるMachine to Machine(M2M)通信の市場。巨大なポテンシャルを秘めたマーケットをいかに掘り起こすのか。動き出した各社の取り組みをレポートする。

M2M通信に対する期待が高まっている。

「M2M関連の商談を一般企業からも通信事業者からも数多くいただいている」と明かすのはNEC新事業推進本部長代理の井手伸博氏だ。また、「シェアで人系の通信をM2Mが逆転することは間違いない」とインターネットイニシアティブ(IIJ)マーケティング本部プロダクトマーケティング部長の神田恭治氏は同社のモバイルデータ通信サービス「IIJモバイル」について語る。

M2M通信とは、人の操作・入力を介さず、機械が別の機械に自動的にデータ送信することを指す。端的な例は、センサーが収集した気温や水量などのデータをセンターに自動送信するケース。農作物管理や災害対策に有効だ。ほかにもM2Mが期待される領域は広大である(図表1)。

図表1 M2M通信の適用分野
図表1 M2M通信の適用分野

M2Mを可能にしたのは、モノやその場所の状態をデータ化し送信するICタグやセンサーの進化・普及だ。それが無線通信(携帯電話網)と結びついた。

M2Mの対象となるモノは日本に10億個あるという。「日本の人口は1億人だが、M2Mはその10倍ある」と日本通信取締役の田島淳氏は語る。日本の携帯電話事業者の売上は2009年度で約8兆円。田島氏は、M2Mを取り込むことで2倍に拡大することが可能と見る。M2Mは減収傾向にある携帯電話事業者が成長を続けるための最重要分野と言えるだろう。SIerにとっても新しいアプリケーションを提供するための有力なツールだ。

なお、M2Mマーケットの進展を図るうえで目安となるのは通信モジュールの契約数だ。電気通信事業者協会(TCA)によると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル3社の契約数は2009年度末で約320万。それに、ウィルコムの200万回線のうち2~3割がM2M利用と見ると、2009年度末で340~360万回線がM2Mに使われていると関係者は話す。20%伸長を続けると想定すると5年後の2014年度には796万回線へ成長する。

月刊テレコミュニケーション2010年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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