IoT(Internet of Things)をメインテーマとする日本IBMのブースでは、来場者が誰でも参加してIoTアプリの作成を体験できる「IBM IoT ラボ」を実施している。
アプリを作る――。こう聞くと、“プログラムの知識がない私にはムリ”と思う方も多いだろうが、このIoTラボは、そんな人にこそぜひ訪れてみてほしい。1行たりともコードを書く必要はない。ダブルクリックとドラッグ&ドロップさえできれば、説明員の指示に従うだけでアプリ開発を追体験することができるのだ。アプリの作り方を説明してくれた日本IBMソフトウェア事業部・Analytics事業部の鈴木徹氏は、「プログラムができない文系の方にこそ来ていただきたい」と話す。
IoTアプリの作り方を説明する日本IBMの鈴木徹氏。「ITに詳しくない人にこそ、我々のツールをしって欲しい」と話す |
このラボでは「IBM IoT Foundation」というIoTシステムを使っている。少し専門的な説明になるが、IBMが提供しているクラウド型のアプリ開発・実行プラットフォーム「IBM Bluemix」において、IoTアプリを開発するためのツールだ。IBM Bluemixは30日間無償で使用でき、アプリを開発して試行することができるというもの。もちろん無償期間後は有料で、開発したアプリを使うことも可能だ。IBM Bluemixは、多種多様なアプリ開発に対応できるが、そのなかでIoTアプリの開発・作成に特化した機能群を揃えているのがIBM IoT Foundationというわけだ。
では、IBM IoT Foundationによるアプリ作成がどのようなものか、順を追って紹介しよう。
WebブラウザからIBM Bluemixにログインし、任意のアプリ名を入力してCREATEボタンを押すと、そのアプリ用のメモリ(最大2GBまで無料)が割り当てられる。これで、アプリを作って使用するための環境ができた。
IBM Bluemix上で、アプリを作成、実行するための環境が用意された。メモリは2GBまで無償で利用できる |
次に、エディタツールの「Node-RED」を起動する。これはいわゆるフローエディタで、あらかじめ用意された機能モジュールを組み合わせて、条件分岐を設定していくだけでよい。繰り返すが“プログラムを書く”という作業は不要だ。画面を開くと下画面のように、サンプルのフローが表示される。なお、このサンプルは、温度センサーからデータを取得し、その温度が40度を超えたらアラートを上げるという一連の動作を行うものだ。
センサーから温度データを読み取り、しきい値を超えた場合にアクションを起こすためのサンプルフロー |
では、その温度データはどこから来るのか。通常ならば温度を図るセンサーが必要になるが、当然、温度センサーなど誰でも持っているものではないし、用意するのも大変だ。そこで、IoT Foundationでは、温度・湿度センサー等のデバイスをシュミレートする機能も備えている。これを使い、上記のサンプルフローにデータを流して、動作を確認することができる。
画面上の各フローは、ダブルクリックすると設定画面が開き、パラメータを変更することができる。例えば「40度」というしきい値も、数値を変えるだけで変更できる。
新たなフローを追加することも簡単だ。IoT Foundationには実にさまざまなフローが予め用意されている。画面左側に並んでいるラベル状のアイテムをドラッグアンドドロップでシート(フローが表示されている中央エリア)へと移動。これを元のフロート連結させればよい。例えば、温度が40度を超えた場合に、Twitterで「逃げろ!」とつぶやくアプリを作りたいなら、【Tweet】のフローをシートに移動し、【danger】(40度を超えた場合に分岐するフロー)と線をつなぐ。そして、【Tweet】をダブルクリックして開いた画面に、つぶやかせたいメッセージ(逃げろ!)を入力するだけだ。
【danger】から【Tweet】へドラッグアンドドロップで線を引くだけでフローがつながる。すべて直観的な操作でできるのが、IoT Foudationの特徴だ |
IBM Bluemixへのログインからここまでおよそ20分程度。ちなみに、文系出身でプログラミングの経験は皆無な記者も特につまづくことなく進めることができた。
日本IBMがこのような仕組みを用意している理由は、「ビジネスの現場にいる、ITに詳しくない人のアイデアをアプリに活かすためだ」と鈴木氏は話す。IoTをどのようにビジネスに活かすのか――、その知見とひらめきを持つのは、プログラム開発に長けた技術者ではなく、現場のビジネスに携わる人達である。そうした人でも扱えて、ビジュアル的に理解しやすいかたちでアプリを開発できる環境を用意することで、IoTを推進していこうというのがIBMの狙いだ。
IBM IoTラボでは、1日に数回、このアプリ作成のデモを実施している。IBM IoT Foundationのより詳細な機能や特徴も知ることができるほか、同社の関連ソリューションもさまざまに展示されている。