ICT×未来

NTTコム、KDDI、ソフトバンク、シスコがパネルディスカッション(前編)

“NFVの現実”をキャリア3社がチェック!「今のままではコスト削減にはならない」

文◎太田智晴(編集部) 2015.04.15

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サービス展開の迅速化、設備/運用コストの削減など、様々な効果が喧伝されるNFV(Network Functions Virtualization)。しかし、NFVを導入すれば、本当にこうした効果を得られるのだろうか。通信事業者3社とシスコシステムズが登壇したパネルディスカッションでは、NFVの現実に対して、厳しい意見が続出した。


通信事業者のネットワーク担当者は実際のところ、NFVに何を期待し、NFVの現状をどう評価しているのだろうか――。シスコシステムズが4月2日に開催したセミナーにおいて、「- “Service Provider Architecture”のこれから - NFVの現状・課題・可能性、そしてその先へ」と題されたパネルディスカッションが行われた。

パネリストとして登壇したのは、NTTコミュニケーションズ 技術開発部 担当課長の棚橋弘幸氏、KDDI IPネットワーク技術部の大垣健一氏、ソフトバンクモバイル ネットワーク本部 ネットワークアーキテクチャ開発室/技術情報部 担当部長の西和人氏の3氏。キャリアネットワークの第一線で活躍するパネリストならではの、深く、そして率直な議論が繰り広げられた。


NFVパネルディスカッション
左からモデレータのシスコシステムズ 河野美也氏、パネリストのNTTコミュニケーションズ 棚橋弘幸氏、KDDI 大垣健一氏、ソフトバンクモバイル 西和人氏

 

「NFVで一番心配なのは信頼性」

3氏の自己紹介後、モデレータを務めたシスコシステムズ Principal Systems Engineerの河野美也氏が最初のテーマとして設定したのはNFVの「リアリティチェック(現実直視)」だ。

河野氏は、新たなビジネス機会の創出、迅速なサービス展開、運用コスト/設備コストの削減など、NFVで一般的に言われている効用を整理したうえで、「実際のところ、NFVはどうなのか?」と各パネリストに質問を投げかけた。


一般的に言われているNFVの主な効用
一般的に言われているNFVの主な効用



VPNサービス「Arcstar Universal One」にNFVを採用するなど、NFVへの積極的な取り組みが目立つNTTコミュニケーションズ。

同社の棚橋氏は、「当然、すべてを仮想化できているわけではない。NFVは、まだまだこれからだと思っている」としながらも、現在、検証作業中だという数多くの仮想アプライアンスのリストをスライドで紹介。「WANアクセラレーターやロードバランサー、ファイアウォール、DPIなど、ものすごくいろいろな仮想アプライアンスが出ている。これらが全部まともに動けば、『すべて仮想化できそう』という気分になりつつある」と語った。


NTTコミュニケーションズが検証中の仮想アプライアンス
NTTコミュニケーションズが検証中の仮想アプライアンス


ただし、課題の1つは、「全部まともに動けば」という点にある。「これだけいろいろなものを検証していると、言われた通りのスペックのサーバーに入れているはずなのだが、まったく最初から動作しなかったり、検証の途中でどこかおかしくなったり、ということも実際起きている」という。


NTTコミュニケーションズ 技術開発部 担当課長の棚橋弘幸氏
NTTコミュニケーションズ 技術開発部 担当課長の棚橋弘幸氏。技術開発部は、新サービスの開発を担っている。また、棚橋氏は2011年からInterop Shownet NOCメンバーを務め、昨年は出展者向けネットワークにNFVを活用した


また、検証環境ではかなり安定していたものの、実際に商用ネットワークに入れてみると、様々な問題が発生するということも経験したそうだ。

もちろんこうしたトラブルは、何もNFVに限ったことではない。物理アプライアンスにおいても新技術の登場時に直面し、乗り越えてきたものだ。

NFVもまさに今そうしたフェーズにあるわけだが、通信事業者のネットワークに要求される可用性の水準は殊のほか高いだけに、当然看過できるものではない。KDDIの大垣氏はNFVに対して、「やはり信頼性が一番心配しているところ」と語った。


KDDI IPネットワーク技術部 大垣健一氏
KDDI IPネットワーク技術部 大垣健一氏。WVS 2の開発を担当している。また、それ以前は研究所に所属し、ETSI NFVやONFなどの標準化活動に従事していた。特にETSI NFVについては「立ち上げからやっていた」という


大垣氏は、主要クラウドサービスの可用性を検証しているWebサイト「CloudHarmony」のデータを引用し、アマゾンのAWSやグーグルのGoogle Cloud Platformなどでもリージョン単位で見ると、1時間以上継続してダウンしている事実を指摘。「3万人以上に影響がある障害を1時間以上起こすと総務省に報告しなければならない」と通信事業者が置かれた状況を説明したうえで、「(仮想化インフラの運用ノウハウが豊富な)アマゾンやグーグルがやっても結構難しい」と、NFVの信頼性に対する懸念を表した。

しかも、「最近のクラウドインフラの障害を見ると、ネットワークの部分での障害が多い」というから、なおさらである。

NTTコミュニケーションズの棚橋氏も、「ネットワークとサーバーの両方のノウハウをもっていない、NFVは厳しい世界」「一番難しいのはトラブルシューティング。NFVでは、サーバーのハードウェア、ハイパーバイザー、仮想アプライアンスのどこに原因があるのか、ものすごく切り分けが難しい」など、NFVの技術的なハードルの高さを指摘する。

コンピューティングの世界ではだいぶ成熟してきた仮想化技術だが、ネットワークの世界ではまだこれから習熟していかなければならない段階のようだ。

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