企業ネットワーク最前線

「自席に縛られない働き方」に向けてアトックスが実行した3つのこと――クラウド化、脱・固定電話、iPhone

文◎太田智晴(編集部) 2014.11.04

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原子力発電所などで放射線の取扱業務を行うアトックス。震災と原発事故を契機にワークスタイル変革の必要性を痛感した同社は、社内システムのクラウドへの移行、脱・固定電話、そしてiPhoneの活用などを通じて今、「自席に縛られない働き方」の実現に取り組んでいる。

「放射線を取り扱う事業には国家資格が求められますが、有資格者の数では、おそらく当社が国内で最も多いと思います」。総務部長の上野和輝氏がこう紹介する通り、アトックス(http://www.atox.co.jp/)は、放射線のエキスパート集団だ。約1500名いる社員の4人に1人が、放射線取扱主任者の有資格者となっている。

同社の主な業務は、放射線設備の運用や保守管理だ。研究所や大学、病院など、様々な放射線施設でアトックスは活躍しているが、なかでもメインの事業となっているのが原子力発電所での放射線管理や運用保守である。

 

アトックス技術開発センター(千葉県柏市)
千葉県柏市にあるアトックス技術開発センター。管理棟、実験棟、保管倉庫の3エリアからなり、各種機器の開発や電力会社などとの共同研究を行っている



原発関連の業務に従事している企業というと、電力会社や原発メーカー、その関連会社がまず思い浮かぶかもしれない。しかし、アトックスは電力会社や原発メーカーとは資本関係のない、いわゆる“独立系”の民間会社。

このため同社が管理・運用保守を行うのは、一部の電力会社の原発や、特定の原発メーカーの原子炉には限定されていない。「原発は日本中にありますが、そのすべてをカバーリングしている会社は当社だけです」と上野氏は話す。

そのアトックスは現在、ワークスタイル変革を推進している。契機となったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災と、それに続く福島原発の事故だった。

「当社は全国各地に多数の拠点がありますが、東日本大震災の際には、北海道から茨城県までの東日本エリアの拠点が大きな影響を受けました。特に原子力緊急事態宣言による避難指示が出された後は、福島の従業員の安否確認や居所確認がまったく取れない状況に陥りました。このときの深い反省が、ワークスタイル変革に取り組んでいる一番の理由です」(上野氏)

今年7月に東京・新富町から田町に本社を移転したアトックス。同社はこれに合わせて、ワークスタイル変革に向けた本格的な第一歩を踏み出している。

 

アトックスの本社ビル
東京・田町の新本社ビル。アトックスの関係会社であるビル代行も入居する

 

ほぼすべての社内システムをKDDIのクラウドに移行

東日本大震災と原発事故により数多くの拠点や従業員が被災し、事業の継続が一部で困難になったアトックス。このとき上野氏が最も痛感したのは、情報共有手段を多様化しておくことの重要性だったという。

「被災した従業員たちが一番求めていたのは、情報でした。携帯電話はつながらない。テレビやラジオで情報を得ることも難しい。そうしたなか我々は、被災した従業員に必要な情報を提供することができませんでした」

そこで、まず着手したのは、社内システムのクラウド化だった。従来は一部のファイルサーバーが各拠点に分散していたのを除くと、東京・新富町にあった旧本社内に、基幹システムやメールサーバー、グループウェアサーバー、Active Directoryの認証サーバーなどが集約されていた。

「つまり、本社が“ボトルネック”になっていました」と企画部 副課長 システム担当の五井直人氏は説明する。本社に障害が発生したり、本社と結ぶ拠点側の回線に障害が起こると、ほとんどの社内システムが利用できなくなるのだ。

五井氏によると、アトックスではセキュリティを担保するため、以前からActive Directoryを活用したネットワークログインとアクセス権限管理を行っている。このため、本社のActive Directoryサーバーに接続できなくなると、各拠点ではWindows PCへのログインすらできなくなる。

こうした課題を解決するため、五井氏が選択したのは、「KDDI クラウドプラットフォームサービス(KCPS)」だった。これは、完全冗長化された設備により稼働率99.99%を保証しているクラウド基盤サービス。高信頼のクラウド基盤に社内システムを移行することで、アトックスは事業継続性の向上を図ったのだ。現在、基幹システムも含めて、アトックスのほぼすべてのシステムがKCPS上で稼働しているという。

クラウドに移行するにあたって、五井氏が最も気を配った点の1つは、ネットワークの信頼性だった。「クラウド化することの一番のデメリットと我々が考えていたのは、システムの可用性が通信回線にかなり依存してしまうことです」(五井氏)。いかに高信頼のクラウドを選択しても、ネットワークに問題が起きたら元も子もない。KDDIを選定した理由はまさにここにある。

アトックスでは、KCPSの通信回線としてKDDIのネットワークサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch(WVS)」を採用。本社を含む各拠点からダイレクトにWVS経由でKCPSに閉域接続するという選択を行った。


図表 アトックスのネットワーク構成イメージ
アトックスのネットワーク構成イメージ



「以前は自前でインターネットVPNを運用していたのですが、障害が発生したとき、原因は足回りにあるのか、ISPなのか、ルーターなのか。拠点の従業員からすると、『つながらない』ということしか分かりません。このため、いろいろと監視の仕組みなども導入していましたが、最終的には障害原因の切り分けや復旧作業は“超職人芸”。ユーザー企業でその技術を維持していくことは並大抵ではありません。そこでクラウドに移行するにあたっては、足回りの光ファイバーまで含めてワンストップで提供・サポートしてもらえることを選定の前提条件にしたのです」(五井氏)

さらに、アトックスの拠点の多くは都市部から離れた場所にあるが、そうしたエリアのカバレッジが大変充実していた点も高く評価したという。

クラウドからネットワークまで、トータルで高い信頼性を実現できることからKDDIを選択したのである。

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