【ワイヤレスジャパン】エリクソン藤岡CTOが語る「世界のモバイル最新トレンド」―LTE/TD-LTEからトラフィック問題、M2Mまで―

ワイヤレスジャパン初日の7月14日。エリクソンCTOの藤岡雅宣氏が、LTE/TD-LTE、スマートフォン、トラフィック問題、M2M、車々間通信など、世界のモバイル最新動向について縦横無尽に語った。

ワイヤレスジャパン初日の2010年7月14日、日本エリクソンの藤岡雅宣CTOが世界のモバイルマーケットのトレンドとエリクソンの取り組みに関する説明会を会場内で行った。

藤岡氏はまずLTEの商用化動向について語った。昨年12月からスウェーデンとノルウェーにおいてテリアソネラがLTEの商用サービスを開始しているが、このほかエリクソンの機器を選定している事業者では、米ベライゾンワイヤレスと米MetroPCSが今年後半、NTTドコモが今年12月、米AT&Tが2011年のサービス開始を予定していると説明した。また、世界の先頭を切ってテリアソネラの現状だが、「現在10MHzの帯域でサービスを提供しているが、かなりのエリアで40~45Mbpsが出ている」という。

LTEの商用化動向(エリクソン機器選定事業者)
LTEの商用化動向(エリクソン機器選定事業者)

さらに藤岡氏は最近日本での注目も高まっているTD-LTEにも言及。エリクソンはチャイナモバイルと行ったTD-LTEソリューションの初の公開試験に成功したという。ただ、「中国での商用化時期は非常にあいまい」。一方、周波数オークションが完了し、すでに「いつでもサービスが始められる状況」にあるのがインドだという。エリクソンも今年後半に行われるフィールド試験に参加するとのことだ。

TD-LTEの動向
TD-LTEの動向

LTEはネットワークの大容量化に大きく貢献するが、急激に膨らむトラフィックにLTEという技術だけで対応できるかといえば、それは困難だ。そこで携帯電話事業者はヘビーユーザーのトラフィック制限や、SON(Self-Organizing Network)の導入などに取り組んでいるわけだが、スマートフォンのトラフィックを抑制するうえでは制御信号が1つのポイントになるという。

エリクソンが実測値に基づいて分析したところ、スマートフォンのデータトラフィック量はPCの10分の1である。ところが制御信号トラフィックを見ると、無線ネットワークではPCの3分の1、コアネットワークではPCと同等と、スマートフォンは多大な制御信号を発生させているという。これは「スマートフォンは数が多いうえに、使用頻度もPCと比べて多いから」。そのため海外の携帯電話事業者では、スマートフォンの制御信号を抑制するための対応を行っているという。

スマートフォンのトラフィック特性
スマートフォンのトラフィック特性

また、エリクソンは最近、あらゆる端末が無線ネットワークにつながっていく「500億コネクション」をビジョンの1つとしているが、その実現に向けた取り組みについても藤岡氏は紹介した。その1つがクルマ向けだ。携帯電話ネットワークを使って交通事故などを防止する「Cooperative Cars(CoCar)」という共同研究をフォルクスワーゲンやダイムラー、独ボーダフォン等と一緒に行っている。これは、「20m先のクルマが急ブレーキを踏んだ」などの警報を携帯電話ネットワークを使って知らせるというもの。実用化に向けては車々間通信の遅延時間が課題となるが、「遅延時間は大体0.5秒以下に収まることが試験で分かった。結果、自動車メーカーからは『使えるのでは』という評価をもらっている」という。このCoCarについては、ワイヤレスジャパンのエリクソンブースでデモを披露している。

CoCarのテスト結果
CoCarのテスト結果

さらに、M2Mにおける柔軟な携帯電話ネットワークの利用を促進するため、3GPPでは現在、MCIM(Machine Communication Identity Module)の標準化が進行中であることを藤岡氏は紹介した。MCIMは、デバイス購入時には特定の携帯電話事業者に限定されず、後で柔軟に事業者を設定できるソフトSIMである。MCIMが実現すれば、例えば海外の人が日本でカメラを購入し、帰国後に自国の事業者と契約するといったことも容易になるという。早ければ、来年にも標準化が完了するとのことだ。

ソフトSIM「MCIM」でM2M時代における柔軟な携帯電話ネットワーク利用を可能に
ソフトSIM「MCIM」でM2M時代における柔軟な携帯電話ネットワーク利用を可能に

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