NFVも活用、インフラからデータ分析・公開基盤まで――HPが通信キャリアやMVNOのM2Mビジネス拡大をサポート

日本ヒューレット・パッカードは通信キャリアを対象にしたM2Mソリューションをポートフォリオとして体系化した。膨大な数となるSIMの管理からネットワークの仮想化、マルチテナントに対応するソリューション、さらにはM2Mビッグデータ分析の一例として、不正利用を検知するソリューションまで幅広いポートフォリオを整備している。同社のM2Mビジネスの戦略とソリューションの役割について、通信・メディアソリューションズ統括本部の山本幸治氏に聞いた。

――HPはM2Mビジネスをどのような戦略の下で推進していこうとされているのですか。

山本 HPは、「M2M参照アーキテクチャ」を作成してM2Mビジネスの領域を定義し、各領域にソリューションをマッピングしています。そのソリューションを提供することによって通信キャリアやMVNOのM2Mビジネスを支援していくこと。それがHPのM2Mビジネスの基本戦略です。(図表1

図表1 M2M参照アーキテクチャにHPソリューションをマッピング[画像をクリックで拡大]
M2M参照アーキテクチャにHPソリューションをマッピング

――通信キャリアのM2Mビジネスをどう見ていますか。

山本 通信キャリアのM2Mビジネスは、3つの領域があると考えています。1つはM2Mに最適化したインフラを提供すること。2つ目はM2Mサービスのアグリゲーターとして、M2Mアプリを開発するパートナーに利便性をもたらす機能・サービスを公開するなど、M2Mエコシステムを提供すること。3つ目がMVNOを含む通信キャリア自身がEnd-To-EndのM2Mサービスプロバイダとなることです。

――M2M向け通信インフラは管理対象となるSIMの数が膨大になります。収益確保のためにもSIM管理にかかるコストを削減することが通信キャリアの課題になりますね。

山本 SIMの出荷計画作成からユーザーがSIMの利用を開始するまでの期間(WARM SIM)は収益を生みません。しかし、番号(MSISDN / IMSI)というリソースの消費やOSS/BSS(Operational Support Systems/Business Support Systems)に関する管理コストが発生しています。またユーザーがSIMの利用を中断・停止している期間(SLEEPING SIM)もSIMは収益を生みませんが管理コストがかかっています。SIMのライフサイクルの中で、これらの“見えにくい隠れたコスト”を抑制することが、通信キャリア/MVNOにとっての課題だと考えています。これはEmbedded SIMにおいても同様です。

特にM2M / IoTのビジネスにおいては、今までに無い規模数のSIMが使用されることになるため、この隠れたコストの抑制と管理運用の効率化が急務であると考えます。

HPは、WARM SIMとSLEEPING SIMのコストを抑制し、SIMのライフサイクル管理を効率化するソリューションとして、HP DSP(Dynamic SIM Provisioning)を提供しています。HP DSPにより、SIMにダミーの番号を割り当てた出荷を可能とします。SIMの出荷後SIMが組み込まれた機器がネットワークに初めて接続されたときに、HP DSPがSIMに正規の番号(MSISDN / IMSI)を書き込み、プロビジョニングを行います。この仕組みにより、番号の消費やOSS/BSSでの管理といった通信キャリアがSIMを管理するためのコストの発生がSIM出荷時からではなくプロビジョニング時点からとなるので、WARM SIMの期間を短縮し、当該SIMが収益を生まない間のコストを削減することができます。

一方、SLEEPING SIMに関しては、一定期間使われていないSIMの番号を検出し、そのSIMをHLR/HSSやOSS/BSSの管理対象から外して別ユーザーに当該番号を割り当てることを可能にする、といった一連のプロセスを効率的に管理する機能を提供します。これにより、通信キャリア/MVNOはSIM管理コストを削減することが可能となります。(図表2

図表2 SIMのライフサイクルとTCO[画像をクリックで拡大]
SIMのライフサイクルとTCO

M2MコアネットワークではNFVやマルチテナントがカギに

――M2Mコアネットワークの方向についてどのように見ていますか。

山本 M2Mのコアネットワークでは量と質、コストを考える必要があります。量の面では前述したように非常に多くのM2M機器からの接続を扱うことになります。質の面では、高い接続品質が求められる医療機器のようなものから、保証型の接続品質までは求められない機器も存在するなど、M2Mコアネットワークに対する要件はバラエティーに富んでいます。そしてM2MのコアネットワークにはARPUの観点から低コストでの構築が求められます。この3つの観点から、M2Mコアネットワークに関する通信キャリアのキーワードとしてNFV(Network Functions Virtualization)が浮上しています。これに対してHPは、HSS(ホーム加入者サーバー、Home Subscriber Server)をはじめ、HLR(モバイル・ネットワークにおける加入者情報データベース、home location register)やPCRF(ポリシーと課金ルール機能、Policy and Charging Rules Function)というトラフィックの質を制御するソリューションの仮想化やNFV対応にも取り組んでいます。

NFVといった仮想化アプローチとともに、M2Mコアネットワークのもう一つの大切なキーワードはマルチテナントという考え方です。M2Mビジネスでは、製造業や自動車産業、医療産業というように顧客のグループ分けが起きてくるでしょう。あるいは、自社専用のネットワークを構築してほしいという要求が出てくることも考えられます。しかし、従来のノードは大規模なものでハードウェアの調達コストも大きく、複数の異なった要件に対応するマルチテナント対応が困難でした。仮想化やNFVに対応したHPのソリューションでは、より簡単に素早く、M2Mコアネットワークのマルチテナント化展開が可能となります。

現在、仮想化したHSSをソリューションとして提供しており、更にHLRやPCRFの仮想化およびNFV対応も準備を進めています。

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