KDDIのLTEの主力バンドは新800MHz帯
KDDIがLTEの展開を始めるのは2012年だ。KDDIの次世代インフラ戦略の大きな特徴は、このLTEのメインバンドとして、新800MHz帯を想定していることにある。
800MHz帯はアナログ/デジタル携帯電話(PDC)用としてドコモとKDDIに順次割り当てられてきた周波数帯だ。そのため、帯域は細切れになっており、W-CDMAやLTEなどの導入が難しかった。この旧800MHz帯の帯域群を整理し、あらためてドコモとKDDIに各15MHz幅の新800MHz帯を割り当て、これらのシステムの導入を可能にしようというのが800MHz帯再編である。
この800MHz帯の再編作業は2012年7月に完了する予定だが、それまでは旧800MHz帯などとの干渉を避けるために、ドコモ、KDDIともに利用できる帯域に制限が設けられている。特にKDDIの場合、ドコモのPDCの運用が終わる2012年3月までは、新800MHz帯15MHz幅のうち5MHz幅しか利用できないという厳しい制約がある。KDDIは、この時点で利用が可能になる残り10MHz幅にLTEを導入することを想定しているのである。KDDIのLTE導入がドコモのLTEサービスの開始から2年後の2012年12月にずれ込む最大の理由はここにあるのだ。
もちろんKDDIにとって、2GHz帯や今回割り当てられた1.5GHz帯でLTEをより早いタイミングで展開するという選択肢もないわけではない。
しかし、このうち2GHz帯は800MHz帯再編に伴うCDMA2000のトラフィックの受け皿として、基地局の整備を急ピッチで進めている段階である。また、計20MHz幅のうち5MHz幅はPHSとの干渉のため、2012年6月にならないと使えないので、帯域幅は15MHz幅に限られている。こうしたことから、LTEの導入は現実問題として困難である。
1.5GHz帯についても、ドコモと同様、KDDIはPDC基地局を東名阪地区にしか持っておらず、この帯域でLTEを本格展開するためには多数の基地局ロケーションを新たに確保する必要があり、現実的ではない。
一方、現在KDDIが急ピッチで整備を進めている新800MHz帯なら、LTEを短期間で全国展開できる。また、86Mbps(端末側は75Mbps)での運用が可能な10MHz幅の帯域を確保することもでき、ベストの選択肢となるのである。
もう1つ、KDDIのLTE導入がこのタイミングとなる理由として挙げられるのが、同社が当初からLTEでハンドセット(携帯電話機)中心に展開することを想定していることだ。現在主要な半導体ベンダーが明らかにしているハンドセット用LTEチップセットの開発スケジュールを考えると、端末の供給が本格化するのは2012年頃となる。KDDIのサービス開始はこのタイミングにフォーカスしたものといえるのだ。