「今後起こるのはリアルワールドのICT化」――富士通 香川本部長に聞く企業NWの将来

今年4月にネットワークサービス事業本部長の任に就いた香川進吾氏。M2Mや映像などのネットワーク技術を最大限に利活用することで、物流、農業、医療など、現場であるフロントオフィスのICT化を推進していく考えだという。

――クラウド、LTE、Androidなど、ICT業界ではさまざまな潮流の勢いが増していますが、こうした動きに伴い、ICTの利活用の仕方も新しいフェーズに入ろうとしているように思います。どう見ていますか。

香川 ICTをめぐる近年の動向として大きいのは、まず端末の多様化です。単にネットブックやスマートフォンという話ではなくセンサー系――血圧計や自動車、家電など、「こんなものまで?」と思うものまでネットワークにつながるようになってきました。

片やクラウド化も進展しています。総務省は2015年までにクラウド市場は現在の約5倍の2兆円規模へ拡大すると予測していますが、クラウドを使うということは結局、ネットワークでつなぐ必要があるということです。そのネットワークの領域では、光ファイバーはもちろん、WiMAX、LTEと広帯域化・無線化が進んでおり、さらに通信ノード同士が自律的にネットワークを構成する「アドホック・ネットワーク」についても実用化が少しずつ見えてきました。

こうしたなか、富士通に現在どんな相談が寄せられているかというと、例えばタクシーの走行情報の活用や、ヘルスレコードを基に健康・治療・介護までが連携した終身対応、スマートコミュニティーによるCO2削減などです。いずれも特定の業種に特化した、従来型のソリューションでは解決できないものが多く、ICTの利活用シーンは大きく広がろうとしていると感じています。

――業種特化では解決できないとはどういう意味ですか。

香川 例えば、クルマに組み込んだセンサーから得られる道路情報や天候状況は、クルマの開発自体には役立たないかもしれませんが、物流会社や情報サービス会社にとっては役立ちます。このように、データの利用価値というものがクロスオーバーしていることがポイントで、業種を超えたサービスの融合によるイノベーションの促進を考えるうえでの起点になっています。

――なるほど。しかし、業種を超えてさまざまなプレイヤーがデータを活用するとなると、何か連携のための基盤が必要になりますね。

香川 そこで、異業種向けのアプリケーションが相互に連携しあえるサービス・プラットフォームというものを考えています。これは、ネットワーク経由でクラウド上に収集されたデータを相互に連携させながら、お客様のアプリケーションに活用していくための基盤です。従来の情報システムに対する入力は人間が行うか、他のシステムが書き出したデータが中心でした。しかし、この新たなサービス・プラットフォームではそれらに加えて、センサーが集めたリアルタイムな情報を、さまざまな業種のプレイヤーが相互に利用することでイノベーションが促進されることを目指しています。

――業種を超えてサービスを融合させるためのICT基盤を富士通が提供しようというわけですね。具体的な取り組みはもう始まっているのですか。

月刊テレコミュニケーション2010年6月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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香川進吾(かがわ・しんご)氏

1958年3月8日生まれ。81年3月、電気通信大学電気通信学部経営工学科卒業。同年4月、富士通入社。2000年12月同社システムサポート本部第二ネットワークインテグレーション部長、02年4月同IDCシステム部長。その後、04年6月ネットワークサービス事業本部ネットワークソリューションセンター長、06年6月同FENICSシステム統括部長、07年11月ネットワークサービス事業本部長代理兼映像ネットワークサービス事業部長を経て、2010年4月にネットワークサービス事業本部長兼映像ネットワークサービス事業部長に就任。現在に至る

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