――クラウド、LTE、Androidなど、ICT業界ではさまざまな潮流の勢いが増していますが、こうした動きに伴い、ICTの利活用の仕方も新しいフェーズに入ろうとしているように思います。どう見ていますか。
香川 ICTをめぐる近年の動向として大きいのは、まず端末の多様化です。単にネットブックやスマートフォンという話ではなくセンサー系――血圧計や自動車、家電など、「こんなものまで?」と思うものまでネットワークにつながるようになってきました。
片やクラウド化も進展しています。総務省は2015年までにクラウド市場は現在の約5倍の2兆円規模へ拡大すると予測していますが、クラウドを使うということは結局、ネットワークでつなぐ必要があるということです。そのネットワークの領域では、光ファイバーはもちろん、WiMAX、LTEと広帯域化・無線化が進んでおり、さらに通信ノード同士が自律的にネットワークを構成する「アドホック・ネットワーク」についても実用化が少しずつ見えてきました。
こうしたなか、富士通に現在どんな相談が寄せられているかというと、例えばタクシーの走行情報の活用や、ヘルスレコードを基に健康・治療・介護までが連携した終身対応、スマートコミュニティーによるCO2削減などです。いずれも特定の業種に特化した、従来型のソリューションでは解決できないものが多く、ICTの利活用シーンは大きく広がろうとしていると感じています。
――業種特化では解決できないとはどういう意味ですか。
香川 例えば、クルマに組み込んだセンサーから得られる道路情報や天候状況は、クルマの開発自体には役立たないかもしれませんが、物流会社や情報サービス会社にとっては役立ちます。このように、データの利用価値というものがクロスオーバーしていることがポイントで、業種を超えたサービスの融合によるイノベーションの促進を考えるうえでの起点になっています。
――なるほど。しかし、業種を超えてさまざまなプレイヤーがデータを活用するとなると、何か連携のための基盤が必要になりますね。
香川 そこで、異業種向けのアプリケーションが相互に連携しあえるサービス・プラットフォームというものを考えています。これは、ネットワーク経由でクラウド上に収集されたデータを相互に連携させながら、お客様のアプリケーションに活用していくための基盤です。従来の情報システムに対する入力は人間が行うか、他のシステムが書き出したデータが中心でした。しかし、この新たなサービス・プラットフォームではそれらに加えて、センサーが集めたリアルタイムな情報を、さまざまな業種のプレイヤーが相互に利用することでイノベーションが促進されることを目指しています。
――業種を超えてサービスを融合させるためのICT基盤を富士通が提供しようというわけですね。具体的な取り組みはもう始まっているのですか。