通信距離がわずか3cmの近接無線通信技術「TransferJet」。通信距離だけを見ると、NFCとよく似ているわけだが、その役割は大きく異なっている。NFCの通信速度が424kbpsなのに対して、TransferJetは560Mbpsと約1000倍。ビデオ等の大容量データの転送などが、TransferJetに期待されている役割だ。
ワイヤレスジャパンの東芝のブースでは、USBアダプタ型のTransferJetデバイスを取り付けたスマートフォンをかざすと、数秒で動画がダウンロードできるデモを実施していた。ちなみに、このデモでは認証や決済にNFCを利用。東芝の説明員は「『TransferJetとNFCは競合するのか』とよく聞かれるが、そうではない。TransferJetとNFCは共存するものだ」と解説した。
TransferJetを活用し、ビデオの有料ダウンロードを行うというデモ |
10Gbpsの超高速化規格も現在策定中
このように高速データ通信が行えるTransferJetだが、無線LANやLTEと比較したメリットは何だろうか。
説明員によると、まず挙げられるのが、電波の帯域をシェアしなくて済むことだという。無線LANやLTEの場合、多くの人で帯域をシェアすることになるので、実効速度はかなり低くなる。一方、TransferJetは、通信距離が3cmしかないため、隣り合った人が同時に通信してもそれぞれが帯域を占有できる。
もう1つは安心感だ。電波が遠くまで飛ばないので、盗聴などの恐れは非常に少ない。
TransferJetは、10Gbpsを実現するさらなる高速化規格も策定中で、2016年から2017年ごろに登場する見込み。「DVD1枚分の動画が4、5秒でダウンロードできるようになる」という。
TransferJetの概要と今後のロードマップ |
ブースではTransferJet内蔵のスマートフォンの試作品も展示されていたが、今後TransferJerが普及すれば、動画の楽しみ方は大きく変わることになるかもしれない。「将来のレンタルビデオ店は、TransferJetを活用してビデオを貸し出すようになる可能性がある。また、空港で搭乗前に、TransferJetを使って好みの映画をスマートフォンにダウンロードし、機内で楽しむといったサービスも登場するだろう」と東芝の説明員は話した。
TransferJet内蔵スマートフォンの試作機。複数のスマートフォンメーカーが試作しているという |