SDNの活躍の場はデータセンターだけにとどまらない。企業内LANへの導入例も出てきているが、その代表例の1つが、昨年6月に導入が明らかになった金沢大学附属病院である。NECのOpenFlowベースのSDN製品「UNIVERGE PFシリーズ」を採用している。
導入から1年以上が経過した今、金沢大学附属病院はSDNをどう評価しているのか――。同病院 経営企画部部長・副病院長の長瀬啓介教授が、11月14日にトレンドマイクロが開催したイベント「Trend Micro DIRECTION」で講演した。
ほぼ毎日トラブルが起きていた従来ネットワーク
「機器の誤接続に不適切なスイッチ設定、大規模なループなど、ほぼ毎日、何かしらのトラブルが起こっていた」。金沢大学附属病院が新設される研究棟用のネットワークとしてSDNを採用することにしたのは、既存の従来型ネットワークに悩まされ続けてきたからだ。
電子カルテ用や検査部門用、薬剤部門用など、院内には用途ごとに独立したネットワークが「数えてみたら40以上あった」という状態。その結果、ネットワーク全体が非常に複雑になり、運用トラブルは絶えなかった。「地道に対処してきたが、物理的ネットワークとしてではなく、論理的に管理しないと解決できない」とSDNの導入を決めた。
NECのUNIVERGE PFシリーズを選択したのは、当時はNECしかSDNの商用製品がなかったこと、そして長年NECが同病院の情報システムを担当してきたことが理由だという。
「SEの人件費は激減した」
新設された研究棟内のネットワークは、OpenFlowスイッチベースの単一の物理ネットワークとして構築されており、SDNによってそのうえに複数の仮想ネットワークを用途ごとに構築している。これにより管理画面から物理ネットワーク/仮想ネットワーク全体が可視化できるようになり、各部門がそれぞれ独立して物理ネットワークを構築してきた従来と比べて、圧倒的に運用管理性が向上したという。
それを端的に示すのは、設定変更時のコストである。長瀬教授によれば、例えば従来型ネットワークで9人日を要していたあるネットワーク設定作業は、SDNでは2人日になったという。従来のわずか約2割である。「SEの人件費は激減した」と長瀬教授は語った。また、変更に伴う物理的な配線コストも、大幅に節減もしくはゼロにできるようになったそうだ。