6月14日まで幕張メッセで開催されているInterop Tokyo 2013の展示会場で、最大の目玉となっているのが「SDN ShowCase」だ。数多くのベンダーがSDNの最新ソリューションやユースケースの展示およびデモを披露しているが、基調講演会場では、このSDN ShowCaseのデモ構成に深く関わったパネリスト等によるパネルディスカッションも行われた。本記事ではパネルディスカッションでの議論から、SDN ShowCaseの見どころとSDNの現状などを紹介していこう。
(左から)モデレータを務めたアイティメディア ITインダストリー事業部 エグゼクティブエディターの三木泉氏、パネリストのNTTコミュニケーションズの佃昌宣氏とNEC 企業ネットワーク事業部 シニアエキスパートの宮永直樹氏、そしてゲストの東京大学 情報基盤センター 准教授の関谷勇司氏 |
デモ総数は昨年の約4倍に
NTTコミュニケーションズの佃氏はまず、SDN ShowCaseを実施したモチベーションについて次のように説明した。「今、メディアなどいろいろなところで、SDNの概念的なことは共有されているが、具体的に何ができるのか。実際に動いている機器を使って見せられる機会は少ない。実際に動いているユースケースをご覧いただくことで、皆さんの理解も深まると思った。SDN ShowCaseでは、今できるSDNを紹介している」
SDN ShowCaseのデモで使用されている機器群。合計7つのラックに収められている |
昨年のInteropでも「OpenFlow ShowCase」という同様の特設コーナーが設けられたが、参加する企業・団体の数は昨年の14から26とほぼ倍増。さらに、デモの数に至っては昨年の8から今年は30と4倍近くに増加している。「昨年はまだ黎明期だったが、今年は各社が考えるユースケースがより出てきていると、この数からも実感している」と佃氏は話した。
SDN ShowCaseのスポンサー企業・団体 |
デモのテーマは、「データセンタ・クラウド事業者」「企業」「通信事業者」の3つにカテゴライズ。いくつか紹介してみると、「クラウドオーケストレータとOpenFlowの連携によるSDNソリューション」(NEC)、「DC構築におけるオーバーレイゲートウェイ・ロードバランシングデモ」(A10ネットワークス)、「SDNによる新たなNWの設計/障害解析スキーム」(NTTコミュニケーションズ)、「仮想ネットワークによるオフィス構築」(ストラトスフィア)、「Microsoft Lync環境におけるSDNの活用」(日本HP)といったデモが行われている。
「マルチベンダーだと無限大の難しさが降ってくる」
このようにSDN ShowCaseは非常に盛り上がっているわけだが、Interop全体のネットワークである「ShowNet」を統括している東京大学の関谷氏からは、こんな指摘もなされた。
「SDNは、まだまだ成熟という意味では熟していない。ShowNetのNOC(Network Operation Center)のメンバーが大体3人くたばると完成する感じ。シングルベンダーでやるならいいが、マルチベンダーだと無限大の難しさが降ってくる」
今回のInteropでは来場者向けの無線LANサービスもSDNで提供されているが、相当の苦労があったようだ。
「NTTコミュニケーションズがSDNに注目する根本的な理由は何か」というモデレータの三木氏による問いに対し、佃氏は「サウスバウンドAPIのオープン性」と答えている。これはもっと分かり易くいうと、「マルチベンダーの機器や、より安価なコモディティスイッチが使えることで、CAPEX(設備投資コスト)を下げること」だという。つまり、マルチベンダーの問題は、SDNにとってきわめて重大である。
ただ、「どのネットワーク技術も、最初は相互接続等に課題がある」と三木氏も話した通り、これは新しい技術が必ず通過する道でもある。今、マルチベンダーでの相互接続に課題があるからといって、SDNの可能性に対する評価を下げる必要はないだろう。問題は今後いかに課題を解決していくかだ。
この点についてNECの宮永氏は、「マルチベンダーの問題に関しては、我々SEの取り組みだけでは厳しい。OpenFlowはバージョン1.3で相互接続性が向上するが、会社対会社で対応していくことが大事」と、ONF等での標準化活動やベンダー間の相互接続検証などが重要との考えを語った。実際、NECは、他のOpenFlowベンダーとの相互接続検証に積極的に取り組んでいる。
いよいよ実際の機器の上で様々なユースケースが稼働し始めたSDN。課題はもちろんあるが、本格普及に向けて健全な道のりを歩んでいると見ていいのだろう。