“非電話系”Androidで新ビジネスを創ろう!

Android搭載スマートフォンの人気が高まっている。ただ、Androidが本当に真価を発揮するのは“非電話系”の組み込み機器においてかもしれない。

Androidが増殖している。

とは言っても、モトローラの「DROID」が販売開始後1週間で25万台売れたり、チャイナモバイルが“13億人市場”に「OPhone」を投入したり、はたまたグーグルブランドの「Nexus One」が発売されたりといったスマートフォンの話ではない。“非電話系”の組み込み機器用プラットフォームとしてのAndroidの利用が進んでいるのだ。

その勢いを強烈に感じさせたのが、2009年11月にパシフィコ横浜で開催された組込み総合技術展「Embedded Technology 2009(ET2009)」だ。Androidを組み込み機器で活用するための共通フレームワークの開発等を行っている一般社団法人「Open Embedded Software Foundation(OESF)」の会員企業がIP電話機やセットトップボックス(STB)、カーナビ、電子ブックリーダー、MID(Mobile Internet Device)など、多彩なAndroid端末を発表した。開発企業の多くは端末販売とともに、アプリ配信やサービス提供も含めた新たなビジネスモデルを模索しており、Androidプラットフォームを活用した新ビジネスの萌芽があちこちに見られた。

「Embedded Technology 2009」に登場したAndroid端末。タッチパネル端末で飲食店の受発注を行ったり、カードリーダーの制御に活用するなどの業務向けシステムのデモも登場した(左上と左下)。右上はアーチャーマインド・テクノロジーのAndroid搭載カーナビ。右下はKDDI研究所によるAndroid搭載STB

また12月には、NTT東日本とNECビッグローブがAndroidプラットフォームを採用した新事業を発表した。Webタブレット型の端末を販売し、アプリ・コンテンツ配信でも収益獲得を目指す。さらに、PCや携帯にはない特徴――タッチパネル操作、薄さ・軽さ、画面サイズ等――をアピールし、これをフレッツ光やISP事業の会員増にもつなげたい考えだ。

NTT東日本のAndroid端末「光iフレーム」。液晶サイズは7インチで、無線LAN機能を搭載する。タッチパネルで簡単に操作できる NECビッグローブが今回の新サービスで使用
する台湾カマンジ社製のAndroid端末「WebStation」

企業規模も業種もまちまちな多数のプレイヤーが集まるAndroidプラットフォーム。そこにどのようなビジネスチャンスがあるのか。“今、Androidビジネスをやるべき理由”を検証していこう。

なぜAndroidなのか

なぜAndroidが採用されるのか。

最大の魅力は、やはりそのオープン性にある。NTTドコモ・スマートフォン事業推進室アプリケーション企画の山下哲也担当部長は、次のように語る。

「Androidがユニークなのは、オープンソースであり、フリーライセンスであること。そのポリシーは他のプラットフォームとまったく異なる。開発した技術を広く公開し、市場全体が大きく成長するなかで他のプレイヤーとの協調関係で自らのビジネスも成長させていく。その新しさ、自由度の高さ、広がりが、多くの人に期待を抱かせるのだろう」

“オープン”“エコシステムの構築”を謳うプラットフォームは数多いが、無償で使えて用途にも制限を設けず、さらに改編改造も自由なものは、Androidをおいて他にない。しかも、CPUと通信モジュールの両方を制御可能となれば、端末開発者の目に魅力的に映って当然だ。

「通信とCPUを両方制御できるOSがライセンスフリーで使える。しかも、Linux用のモジュールは世界中に転がっている。それらの流通性も含めたトータルで考えれば、ソフトウェア開発にかかるコストは非常に安くなる」

そう語るのは、OESF代表理事の三浦雅孝氏だ。従来ならば莫大なコストを要した端末の開発が圧倒的に低コストでできるようになる。それが端末の増加と多様化を生み、それがまた魅力となってアプリを配信しようとするプレイヤーを惹きつける。

その図式はスマートフォンでも他の組み込み機器でも変わらないが、スマートフォンという一カテゴリよりも端末とサービスが差別化しやすい“非電話系”のほうがAndroidの優位性は発揮しやすいはずだ。

組み込み業界への福音

実際の端末開発者からの“Android評”に目を向けてみよう。

先のET2009においてIP電話機、STBなどのAndroid端末を展示したコベンティブ(本社:横浜市)。代表取締役の神代敏彦氏は、「Androidは組み込み機器開発のハードルを大きく下げる」と語る。最大の理由は「いろいろなモノがタダになる」ことだ。

月刊テレコミュニケーション2010年2月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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