通信事業者のネットワーク内にあるさまざまな機能や情報をサードパーティが活用し、多彩なサービスやアプリケーションを生み出していく――。
2008年春に商用化されたNTTのNGNをはじめ、世界の通信事業者が構築を進めるIMS(IP Multi-media Subsystem)ベースの次世代ネットワークで実現が期待されているシナリオの1つだ。
このシナリオの前提となる通信事業者の網機能の提供を効率化するものとして関心が高まってきたのが、今春OMA(Open Mobile Alliance)でファーストバージョンが標準化されるネットワークAPIの共通規格「NGSI(Next Generation Service Interfaces)」である。
通信事業者の網機能をサードパーティが使えるようにするには、ネットワークを通じて機能を提供するためのAPIの策定と、これに沿ったシステム構築、APIの開示が必要だ。
この種のAPIの多くは、通信事業者それぞれの独自仕様となっているが、汎用的な機能についてAPIを共通化すれば、通信事業者は網機能の提供コストを低減することができ、一方でサードパーティもサービス開発を効率化できる。
こうしたネットワークAPIの共通仕様としてはすでに「Parlay X」が策定されているが、NGSIはその機能拡張版に当たる。
図表 NGSIの導入イメージ [クリックで拡大] |
Parlay Xでは、呼制御やメディア制御、課金・決済、さらに携帯電話における位置情報やプレゼンス情報の取得、端末制御など多くのAPIが定義されており、通信事業者はParlay Xを実装したSDP(Service Delivery Platform)を導入することで、これらの機能を容易にサードパーティに提供できる。
NGSIのアプローチは、Parlay XのAPIを拡充することで、これをNGNや企業のプライベートネットワーク、さらにはWeb 2.0との連携などにも対応できる「次世代仕様」に進化させようとするものだ。
現時点ではParlay Xを利用した通信事業者の網機能の提供事例は、海外で呼制御やショートメッセージ(SMS)の機能を試験的にサードパーティに開放しているケースがある程度で、本格展開には至っていない。要因の1つは現行のAPIはあくまでも電話を基本としたもので、サードパーティにとってもさほど利用価値が高くないことにあると見られる。APIの拡張でより付加価値の高いサービスが実現できるようになれば、サードパーティのニーズにドライブされる形で、網開放の動きが加速することも期待できる。
「日本発」の標準API
実は、NGSIはNECが実用化を主導している「日本発」の標準規格でもある。
NGSIのベースとなったのは、NECが08年3月にNGNのアプリケーション開発の促進を目的に他のソフトウェアベンダーなどと立ち上げた「NGNミドルウェアパートナープログラム」において、08年9月に策定された「NGNミドルウェア共通API仕様第1版」だ。