ビデオ会議ベンダーのVidyo Japanが2012年8月31日、同社の事業や製品について紹介する記者説明会を開いた。Vidyo（読み方は「ヴィディオ」）という会社名に聞き覚えのない人もいるだろうが、「意識せずにVidyoを使っている方は多いと思う」と同社代表取締役の楠本博茂氏。

実は、日立製作所のビデオ会議システム「Wooolive」やリコーのポータブルビデオ会議製品「RICOH Unified Communication System P3000」は、Vidyoをベースにした製品である。また、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク等もVidyoベースのビデオ会議サービスを提供しているほか、グーグルのビデオチャット「Google+ ハングアウト」にも採用されているという。

そして、2012年第1四半期の成長率は90％増と、今伸び盛りのビデオ会議ベンダーなのである。

Vidyoの概要

従来のビデオ会議の2つの課題を解決

Vidyoがビデオ会議市場で急成長している理由として、楠本氏は「革新的なビデオアーキテクチャ」を挙げた。

同氏は以前、ビデオ会議大手のタンバーグ（現在はシスコに買収）の日本法人社長を務めていた経験をもつが、当時2つの大きな課題を感じていたという。

1つは専用の端末が必須なこと。もう1つは多地点での会議にはMCUが必要だが、このMCUは次の問題を有していることである。非常に高価なこと、多地点の映像の合成するため遅延や画質劣化が生じやすいこと、MCUにトラブルが発生すると会議が実施できなくなるといった問題だ。

「Vidyoは、この2つともきれいにクリアするソリューション。それでVidyoに賭けてみようと、4年前に入社した」

まず1つめの課題については、VidyoではPCやスマートフォン、タブレットなど、専用端末なしで利用可能だ。これ自体は現在では珍しいものではなくなっているが、「モバイルだからといって品質が下がるということはない。Vidyoの場合、すべての端末で少なくともSD以上。また、200ms以上の遅延があるとクオリティは落ちてしまうが、モバイルでもその基準を満たす」そうだ。

PCのほか、スマートフォンやタブレットでもテレプレゼンス品質を提供するというVidyo。会見ではiPadやiPhoneによるデモも行われた

2つめの課題については、MCUではなく同社独自の「Intelligent Routing Adaptive Video Layering」というアーキテクチャを採用することで解決しているという。

MCUの場合、各拠点から送られてきた異なる解像度・異なる回線速度のビデオをいったんデコードして合成し、それから再びエンコードして端末に配信するため、遅延やジッターが発生しやすい。

旧来のMCUアーキテクチャの課題

これに対してVidyoのアーキテクチャの場合、合成といったプロセスを経ないため、遅延やジッターは少なくて済むという。「本当にルーティング機能だけ。しかもエンコード／デコードは1回で済むので、品質が劣化しない仕組みになっている」

こうしたことが可能になるのは、国際標準の映像符号化方式「H.264/SVC」を採用しているからだ。H.264/SVCでは、映像がレイヤー構造で記録されており、端末の性能や回線状態に応じた最適なビデオを提供できる。先に「モバイルだからといって品質が下がるということはない」というコメントを紹介したが、それはこのH.264/SVCの貢献が大きい。

Vidyoでは端末に応じて最適なビデオを実現できる

また、Intelligent Routing Adaptive Video Layeringを実現するためのVidyo Routerは、MCUと比べると「数十分の一くらいの価格で提供できる」とのことだ。

Vidyoの日本支社が設立されたのは昨年10月のこと。これまで国内ではVidyoブランド以外での展開が目立っていたが、これを機に今後はリセラー経由のVidyoブランドでの販売も一層強化していく方針だという。