もう1つのプラチナバンド「920MHz帯近距離無線」とは?――省エネと家庭にビジネスチャンス

スマートメーターやHEMS/BEMS向けの通信技術として注目される920MHz帯近距離無線が7月25日に“解禁”された。このシステムの登場で、さまざまな分野に新たなビジネスチャンスが生まれそうだ。

7月25日、ソフトバンクモバイルが新たに割り当てを受けた900MHz帯での3G携帯電話の運用を開始した。

この900MHz帯や、NTTドコモ/KDDIが利用している800MHz帯といった1GHz(1000MHz)よりやや低い周波数帯は「サブGHz帯」と総称され、屋内や見通し距離の外にも伝わりやすい特性を持つ。ソフトバンクは、伝搬特性に優れるこの帯域を、その希少性とも併せて「プラチナバンド」と名付け、獲得に力を入れてきた。

さてこの日、900MHz帯に隣接するRFID(電子タグ)用の周波数、920MHz帯(915-928MHz)でも、電波の「飛びの良さ」を生かした新タイプの無線データ通信システムの本格運用が“解禁”される。センサーネットワークの構築に適した通信システムとして日本では2.4GHz帯で運用されているZigBeeのサブGHz(920MHz帯)版といえるものだ。

伝送レートは数十~数百kbpsと比較的低いが、数メートルから数十メートル離れた機器の間でメッシュ型、スター型などの多様なネットワークを自働的に構築し、安定した通信が行える。さらに、省電力性もこのシステムの特徴で、電池で数年間稼動できる。

欧米では、2.4GHzだけでなくサブGHz帯でもZigBeeが使えるようになっており、日本でも同様の環境の整備が望まれていた。今回、これが実現することになる。

図表1 電子タグ(RFID)の国際周波数
電子タグ(RFID)の国際周波数

日本でのサブGHz帯近距離無線の実質的なスタート

ZigBeeは、普及促進団体のZigBeeアライアンスが定めた規格の名称だが、920MHz帯ではこれ以外にも同様の技術が広く使われる。そこで本稿では、920MHz帯を使う近距離無線技術を総称して「920MHz帯近距離無線」、海外など他のサブGHz帯を使うものを含む場合「サブGHz近距離無線」と表記する。

実は、日本でのサブGHz近距離無線の導入は今回が初めてではない。総務省が2008年に、2006年からRFID用で使われている950MHz帯に「近距離無線」を導入するための制度整備を実施し、一部で導入が始まっていた。

ところが2010年に総務省は、携帯電話向けの900MHz帯を海外の帯域と整合させるため、RFIDの運用帯域を950MHz帯から920MHz帯へ移行させる方針を発表した。日本でのサブGHz近距離無線の展開は仕切り直しとなった。

図表2 900MHz帯の周波数移行イメージ
900MHz帯の周波数移行イメージ

移行先の920MHz帯を近距離無線で利用するための制度整備は、昨年12月に完了しているが、現在、この帯域ではKDDIの旧800MHz帯CDMA2000が運用されており、近距離無線で使えるのは一部の空き帯域に限られている。KDDIの旧800MHz帯の運用が終了し、920MHz帯が全面的に使えるようになる7月25日が、日本でのサブGHz帯近距離無線の実質的なスタートとなるのだ。

月刊テレコミュニケーション2012年7月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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