KDDIがマルチメディア放送の委託放送事業への参入目指し、新会社設立

KDDIは2010年6月3日、MediaFLO技術を用いた携帯端末向けマルチメディア放送事業への参入を目的として、「メディアフロー放送サービス企画株式会社」を5月26日に設立したと発表した。

資本金は5000万円で、KDDIが82%、残りをテレビ朝日、スペースシャワーネットワーク、アサツー ディ・ケイ、電通、博報堂の5社が出資している。代表取締役社長には、KDDIグループ戦略部長の神山隆氏が兼務する。

メディアフロー放送サービス企画代表取締役社長の神山隆氏

マルチメディア放送は、地上デジタル放送移行後に空き地となるアナログテレビ放送の周波数帯のうち、VHF帯ハイバンドでの導入が予定されている。

日本におけるマルチメディア放送はハードとソフトが分離した形となり、全国に放送用のインフラを整備する受託放送事業者と、受託放送事業者へコンテンツを提供する委託放送事業者に分かれる。受託放送事業者は1社のみで、KDDIとクアルコムのメディアフロージャパン企画と、NTTドコモを中心とするマルチメディア放送の一騎打ちとなっている。メディアフロージャパン企画はMediaFLO方式、マルチメディア放送はISDB-Tmm方式と、それぞれ採用する方式が異なるため、実質的には方式選択の争いといえる。

神山氏は、「委託放送事業者やコンテンツプロバイダーにとっては、受信機がユーザーにどれだけ普及するかが重要」と指摘。その点、MediaFLOは海外で普及が進んでおり、国内メーカーの海外展開による受信機の低廉化が見込めるという点でISDB-Tmm方式より有利だという。

記者会見には、クアルコムジャパン代表取締役会長兼社長の山田純氏も登壇、MediaFLOのグローバル動向について説明した。

それによると、米国では携帯電話事業者で1位のベライゾン・ワイヤレスと同2位のAT&Tがサービスを提供しており、112都市で2億人以上の人口をカバーしている。AT&T向けチャンネルのESPNでは、ワールドカップの全64試合をMediaFLOで放送するという。このほか、アジアや欧州、中南米など約20カ国で導入に向けた検討が進んでいることも明らかにされた。

山田氏は、アップル「iPad」でMediaFLOを視聴するための小型受信用端末「PocketFLO」の試作機を使ったデモも披露した。

「PocketFLO」を披露するクアルコムジャパン代表取締役会長兼社長の山田純氏

PocketFLOは、MediaFLOの放送波を受信し、Wi-Fiを経由してiPad上で映画や電子書籍を楽しむことができるというもの。ストリーミング放送のほか、気に入ったコンテンツをPocketFLOに蓄積しておき、後から視聴することも可能だ。山田氏は「iPadのようなタブレット型端末は、MediaFLOを堪能するのに最適なデバイス」と語った。

なお、受託放送開設計画の認定申請は今月7日に締め切られ、早ければ7月にも受託放送事業者が確定する。

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