M2Mのグローバルトレンドと課題とは?――エリクソンが記者説明会を開催

エリクソン・ジャパンがM2Mに関する関する記者会見を開催し、グローバルでのM2Mのトレンドや課題などを説明した。グローバルM2Mの発展にとって重要な意味を持つソフトウェアSIMについては「先行きが見えない」状況だという。

エリクソン・ジャパンは2012年4月27日、近年非常に注目が高まっているM2Mビジネスに関する記者会見を開催。M2Mの世界的トレンドなどについて説明した。

同社CTOの藤岡雅宣氏はまずM2Mビジネスの特徴として、「ARPUは大体数百円と言われている。コストを下げないとマージンを確保できない」と指摘した。この点をクリアしないかぎり、M2M市場が期待通りの成長を遂げることは難しいが、そこで進展しているのが次のトレンドだという。

M2Mビジネスの特徴
M2Mビジネスの特徴

1つは垂直統合モデルから水平分割モデルへの移行である。企業毎やアプリケーション毎にM2Mソリューションを個別構築するのではなく、M2Mに必要な機能をできるだけ共通プラットフォーム化。通信事業者などのM2Mプラットフォームプロバイダーがクラウドサービスなどとして提供することで、導入・運用コストを下げていくという流れだ。

エリクソンがすでに通信事業者向けにM2Mプラットフォームの提供を行っている関連記事ほか、Jasper Wireless、NECなどがM2Mプラットフォームサービスを始めている。

機能別の水平分割モデルが主流になるM2Mの実現モデル
機能別の水平分割モデルが主流になるM2Mの実現モデル

また、「B2Bモデルによって、セールスコストを下げる」(藤岡氏)のも一般化しているという。ここでいうB2Bモデルとは、個々のエンドユーザーから通信事業者が通信料金を徴収するのではなく、M2Mサービスを提供するメーカーなどが肩代わり。メーカーは、その通信料金を製品価格に含めるなどの形で回収するモデルだ。例えば、アマゾンのKindleやホンダのリンクアップフリーなどが代表例として挙げられる。

通信事業者はARPUの高い携帯電話においては、販売奨励金をつけるなど非常に高いセールスコストをかけて通信サービスを販売している。だが、低ARPUのM2MではこのB2Cモデルは通用しない。ところがB2Bモデルでは、例えば「自動車メーカーと1回契約すると、何十万台、何百万台の規模になる」など、1契約当たりのセールスコストを大幅に下げることができる。通信事業者が直接、顧客にM2Mサービスを提供するB2Cモデルではなく、B2Bモデルを採用することで、低いARPUの中からマージンを確保していこうというわけだ。

さらに「グローバル化」も最近のM2Mにおけるトレンドになっているそうだ。経済がグローバル化するなか、各メーカーは世界各地に市場を広げており、1つのデバイスで世界中でM2Mサービスを提供できることが求められているためである。

課題は「国際ローミング」と「ソフトウェアSIM」

このグローバル化については、様々な課題も生じているという。まずはローミングによる通信コストの問題である。

メーカーなどがモバイル通信サービスを活用したM2Mサービスを提供するには、現地の通信事業者と契約する必要がある。だが、世界各国の現地通信事業者とそれぞれ交渉するのは非常に大変だ。そこで1キャリアと契約すれば各国でM2Mサービスを提供できるよう、M2Mに積極的な海外の大手通信事業者は、国際ローミングの仕組みを使ってワンストップサービスを提供しているという。その通信事業者と契約すれば、後は国際ローミングにより世界各国で通信サービスが利用できる。

だが、ローミングのネックは、現地の通信事業者との直接契約と比べ、通信コストがかさむことである。また、遅延などの問題もある。

そのため藤岡氏によれば、「航空会社のマイレージサービスのように、各国の通信事業者がアライアンスを組む」動きが活発化しているそうだ。これにより、世界中で展開するボーダフォンなどに対する競争力も確保できる。

また、「グローバル化に絡んで長い間、議論されているが、まだ先が見えない」(藤岡氏)というのがSIMの問題である。

現状、SIMは固有の通信事業者と紐付いている。そのためデバイス出荷時にSIMを埋め込むと、利用できる通信事業者も固定されることになる。自動車やデジカメなど、世界中の様々な国へ輸出するデバイスの場合、これでは非常に不便だ。

そこで、オンラインでSIMの内容を書き換えられるソフトウェアSIMが以前から検討されているが、肝心の通信事業者が「積極的ではない」(カスタマー・エンゲージメント本部 モバイル・ブロードバンド部 担当部長 シニア・コンサルタントの関矢壮範氏)という。手軽に通信事業者を選択/移行できるようになると、現在のエコシステムが大きく崩れる可能性があるからだ。

ダウンローダブルSIM(ソフトウェアSIM)の概要
ダウンローダブルSIM(ソフトウェアSIM)の概要

ただ一方で、関矢氏によれば、「最近、大手エンタープライズで、『ソフトウェアSIMをサポートしてほしい』との声を大きくなっている」とのこと。通信事業者にとっては抵抗感の強いソフトウェアSIMであるが、顧客の声に押される格好で実現されることになるかもしれない。

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