auのマルチキャリアRev.A展開戦略――14.7Mbpsへの高速化も検討

KDDIが来年秋にも導入を予定する「マルチキャリアRev.A」は、少額の投資で短期間にデータ通信速度を3倍に向上させるもの。さらに64QAMを導入し、下り14.7Mbpsを実現する検討も進んでいるという。

KDDI(au)が2012年末のLTEサービス開始までの「つなぎ」として導入を計画している新データ通信システム「マルチキャリアRev.A」の具体的な姿が明らかになってきた。

このシステムはauのデータ通信の主力であるCDMA2000 1x EV-DO Rev.Aの「改良版」。下り最大3.1Mbps/上り最大1.8MbpsのRev.Aの搬送波(キャリア)を2波あるいは3波束ねることで、通信速度を向上させるものだ。

最大通信速度は3波運用時で下り9.3Mbps/上り5.5Mbps、2波運用時でも下り6.2Mbps/上り3.6Mbpsとなる(図表1)。

図表1 マルチキャリアRev.Aの概要   

マルチキャリアRev.Aは、規格上はRev.Aの後継としてCDMA2000の標準化団体3GPP2で2006年に策定された「EV-DO Rev.B」の一部仕様(サブセット)である。Rev.Bは、Rev.Aを段階的に高度化し、最高スペックでは下り最大73.5Mbpsの高速データ通信にも対応する広範な規格だが、その中からソフトウェアアップグレードだけで既存のRev.A設備に導入できるシンプルな仕様を切り出したのがマルチキャリアRev.Aである。

都市部は3波9.3Mbps

総務省は、4月にKDDIがマルチキャリアRev.Aの導入方針を固めたことを受け、8月に情報通信審議会情報通信技術分科会に「携帯電話等周波数有効利用方策委員会 CDMA2000高速データマルチキャリア方式作業班」を設置、同方式の技術基準の検討をスタートさせている。

初会合でKDDIは前述のマルチキャリアRev.Aのスペックを明らかにしたが、その具体的なサービスイメージは次のようなものになる。都市部などを中心に整備が進められている2GHz帯基地局が利用可能なエリアでは、3波利用の下り9.3Mbpsのサービスが利用できる。

また、新800MHz帯のみでカバーされるエリアでは、帯域幅の制約からRev.Aの搬送波数が最大で2波となるため6.2Mbpsが最大通信速度となる。もちろんRev.Aが1波しかない基地局に接続した場合は最大通信速度は3.1Mbpsにとどまる(図表2)。

図表2 KDDIのマルチキャリアRev.A導入プラン

サービスインは2010年度後半の予定だ。

ところで、9月に開かれた作業班の第2回会合では、この仕様に加えて3波運用時の下りの最大通信速度を14.7Mbpsに向上させる仕様が技術基準に追加されることになった。これはRev.Aの最大通信速度時の変調方式を16QAMから64QAMに変更して高速化するものだ。

もっともKDDIは現時点では、この仕様を導入するかどうかは明確にしていない。同社でマルチキャリアRev.Aの導入戦略を担うau技術企画部システム戦略グループリーダーの松田浩路氏は「現行基地局の処理能力で対応できるか、64QAM対応で本当にサービス性が向上するかを見極めている段階」だという。

月刊テレコミュニケーション2009年11月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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