次世代ARエンジンで巨大市場を拓く!――あるベンチャー企業の挑戦

次世代ARエンジンで、グローバル企業への飛躍を目指すベンチャー企業がある。東京・台東区に本社を構えるウェルシステムだ。マーカー不要の「イメージ認識」を実現したARエンジンが今年完成。さらに道順まで案内可能な「歩くナビ」を開発し、AR市場に挑む。

モバイル分野における巨大な潜在市場として脚光を浴びるAR(Augmented Reality:拡張現実)――。調査会社のシード・プランニングによれば、AR活用サービスの市場規模は2015年に1800億円に達する見込みだが、この超有望市場に挑戦するベンチャー企業が東京・台東区にある。梁承豪社長が率いるウェルシステムだ。2009年からARエンジンの開発に着手した同社は、今年その開発を完了。いよいよ本格的にモバイルAR市場に打って出始めた。

目標は1万5000人のグローバル企業

ウェルシステムは、約9年前に来日した韓国人の梁氏が2005年に設立したシステム開発会社だ。韓国ではなく日本で起業した理由の1つには、ソフトバンクの孫正義社長の著書の影響があったという。「今まではアメリカが中心だったが、これからはアジアが中心になる。孫さんの本に書かれていたそんな言葉に感動して、アジアの中でもマーケットが大きい日本で起業することにした」。創業から今年で6年、POSや金融システム、スマートフォンアプリの受託開発などをメインに事業は順調に拡大し、現在では40名の社員を抱えるまでになった。

だが、梁社長はまだまだ満足していない。梁社長の人生の目標は、「ウェルシステムを従業員1万5000人のグローバル企業にすること」だからであるが、この夢のカギを握っているのがARだ。ARエンジンの開発を担当するソリューション事業部研究室長の韓尚俊氏は語る。「グーグルやアップルなど、大成功したIT企業は皆、素晴らしい基盤技術を持っていた」。つまり、ARの基盤技術をテコに、グローバル企業への飛躍を目指そうという戦略なのだ。

ARマーカー不要でビデオクリップが自動再生

ウェルシステムが完成させたARエンジンの特徴は、「イメージ認識」を実現している点である。

ARというと「マーカー認識」と呼ばれるタイプを思い浮かべる人も多いだろう。QRコードによく似たARマーカーをスマートフォンなどのカメラで読み取ると、ARコンテンツを表示するものだ。

これに対してイメージ認識とは、マーカーのような特殊な画像ではなく、登録した一般的な画像を認識してARコンテンツを表示するもの。韓氏が披露してくれたのは、韓国の人気グループ、少女時代とKARAのアルバムジャケット画像を使ったデモだ。アルバムジャケットの画像にスマートフォンのカメラをかざすと、少女時代とKARAの曲のビデオクリップの再生が自動的にスタートした。

登録されたイメージを認識すると、ビデオクリップの再生などのアクションを実行できる。イメージの向きが横や下になっていても、読み取り可能
登録されたイメージを認識すると、ビデオクリップの自動再生などのアクションが実行される。イメージの向きが横や逆などになっていても、きちんと読み取り可能

マーカー認識では事前にわざわざARマーカーを印刷しておく必要があるが、イメージ認識の場合、そうした手間が不要でコストも抑えられる点などが大きなメリットだ。普通のアルバムジャケット、ポスター、チラシ、製品パッケージ等のイメージを使って、ARによるプロモーションやサービスを展開できる。デモではプロモーション動画の再生だったが、3Dコンテンツの表示や商品販売ページの表示など、広告効果を高める様々な活用方法が考えられる。また、平面のイメージだけでなく、例えば缶コーヒーに印刷されたロゴなど、立体物に印刷された歪んだイメージでも認識可能。さらに、認識にかかる時間もARでは重要だが、「既存のAR認識アプリと違って、数十万件という大量のイメージデータベースから数秒以内に対象を検索することもできる」という。

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