電波開国――ワイヤレス大国 ニッポンの転機[第2回]【700MHz帯、900MHz帯】グローバルバンド化で携帯端末事情が一変

早期利用か、海外帯域との協調か――。700/900MHz帯の見直し論議は、利用開始を3年遅らせ、「グローバルバンド」に整合させることで決着した。“脱ガラパゴス”により、一体何が変わるのだろうか。

利用開始が2012年に迫った新たな移動通信向け周波数帯域「700/900MHz帯」――その割当プランを見直すかどうか。「再編アクションプラン」をとりまとめた「周波数検討ワーキンググループ」の議論の中心テーマはまさにここにあった。

700/900MHz帯は、(1)アナログテレビ放送の終了で空き地となる700MHz帯の帯域の一部と(2)NTTドコモとKDDIが利用している800MHz帯の再編で空きができる900MHz帯の帯域を、LTEや3G(第3世代携帯電話)で利用しようとするもの。

LTEや3Gでは、端末から基地局方向の「上り」と基地局から端末方向の「下り」の通信に別の周波数を使い同時送受信を可能にするFDD(周波数分割複信)方式が用いられている。総務省は当初、(1)(2)の帯域でこのFDDの「上り」「下り」のペアバンドを組むプランを策定していた(図表1の総務省原案)。その利点は、800MHz帯再編が完了する2012年時点で、すぐに40MHz×2(FDDの上り下りの帯域をこう表記)というまとまった帯域を利用できることだ。日本が開発を主導してきたLTEを世界に先駆けて普及させ、日本のICT産業の競争力強化につなげることが意図されていた。

3年遅れで海外バンド準拠に

約半年の議論を経て周波数検討WGが導いた結論は、総務省原案の全面見直し。具体的には700MHz帯に最大で35MHz×2、900MHz帯に15MHz×2のペアバンドをそれぞれ設定するというものだ。狙いは、日本独自の700/900MHz帯のバンドプランを海外で広く普及している(もしくは今後普及が見込まれる)プランと整合させることにある。

「再編アクションプラン」では、具体的な帯域の配置は明示されていないが、(1)700MHz帯については、アジア太平洋地区の通信事業者や政府機関が参加する国際組織AWF(APT無線通信フォーラム)で策定中の共通バンドプラン、(2)900MHz帯については、欧州、アジア、中東、アフリカなどで使われている3G向けの周波数帯(UMTS900)と整合したプランの導入が想定されている(図表1)。

図表1 700/900MHz帯の再編成 (クリックで拡大)
図表1 700/900MHz帯の再編成

これらの新プランは導入に際して隣接する既存システムの移行を伴うため、両帯域の利用開始は当初予定から3年遅れの2015年になる。なお、900MHz帯のうち5MHz×2はパーソナル無線との調整を行い、2012年から先行利用される。

月刊テレコミュニケーション2011年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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