NTTドコモの法人新戦略に迫る(3)NTTドコモ「第二法人営業部」の研究――M2Mの巨大市場が控える

巨大な潜在市場として期待されるM2M。NTTドコモ法人営業部において、M2M事業の中核を担うのが第二法人営業部だ。シリーズ「NTTドコモの法人新戦略に迫る」の第3回は、第二法人営業部にフォーカスする。

さまざまな機器・装置に通信モジュールを組み込み、データ通信を行うM2M(マシンtoマシン)、いわゆるマシンコミュニケーション分野は今後の移動通信市場の新需要の筆頭として世界的に注目されている。今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress」でも、車載システムを扱うITSなどが来場者の関心を集めた。

NTTドコモが2012年までの「中期ビジョン」のチャレンジ項目として掲げているのが家電や自動車など異業種との連携による「融合サービスの取り組み」であり、その軸となるのがこのM2Mだ。

TCA(電気通信事業者協会)の発表によると、2010年8月末現在の通信モジュールの契約数はトップのドコモが178万3700、auが119万1900、ソフトバンクが83万2200。ドコモでは法人へのM2M営業強化の観点から、営業組織とは独立していたマシンコム推進担当チームをこの7月に第二法人営業部に統合した。

M2Mユーザーの7割は第二法人が担当する業種であることから、より企業ユーザーに近いところで今後の用途開発、企業開拓を急ごうというわけだ。

製造業や流通・サービス業などを受け持つ第二法人営業部を率いる執行役員の吉澤和弘氏は「M2M市場は携帯電話とは異なる別ジャンルで、ポケベルに始まるリアルタイムの情報通知という独自の特徴を持っている。企業の業務効率化はもちろん、顧客サービス向上にも貢献できる。戦略的に取り組んでいきたい」と語る。

BtoBtoCでの導入も

M2Mは当初、飲料水やたばこの自動販売機、バスやタクシーの配送・運行管理などでの導入が中心だったが、モジュールの小型・軽量化および省電力設計により、最近では電気やガス、水道の検針、ハンディターミナルや決済端末など幅広く使われている(図表)。

図表 M2M利用の産業別内訳(ドコモユーザー) ※2010年3月現在
図表 M2M利用の産業別内訳(ドコモユーザー) ※2010年3月現在

M2Mは導入企業に対して「距離が離れているものにリアルタイムに情報を届け、効果的に次のアクションに結びつける」という付加価値を提供する。

例えば自動販売機の場合、モジュールを搭載して検量システムと融合させることで、在庫情報や故障情報を遠隔で把握することが可能になる。作業員が自販機の在庫状況や故障の有無を1台1台出かけて点検する必要がなくなり、業務効率化や人的稼動の省力化を実現する。

こうしたBtoBに加えて、最近では導入企業の顧客にサービスを提供するBtoBtoCでの導入も進んでいる。

ドコモがフクダ電子、日本ソフト販売とともに開発した「AEDガーディアン」は、突然の心停止の際に電気ショックを与えて蘇生する機器「AED」の状態を遠隔で監視する。また、バス会社の運行管理システムでは、GPSの位置情報を活用し、バスの現在位置からバス停に到着するまでの時間をiモードメールで利用者に通知するサービスも提供している。

M2Mの将来像について、かつてNTTドコモの立川敬二社長(当時)は「家庭で飼っている犬や猫も移動通信の需要母体となり、動くものすべてに通信機器が取り付けられる」として、3億台規模になると語った。

犬や猫はともかく、ネットワークとの接続により何らかのメリットが生まれる装置・機器はことごとく通信モジュール搭載の可能性を秘めており、「2020年までに無線接続機器は世界で500億台になる」との見方もある。

では、本格普及のためには何が必要なのか。NTTドコモ法人事業部第二法人営業部マシンコム営業企画担当部長の中村康久氏は「さらなる小型化・低消費電力化・コストダウン」の3点を挙げる。携帯電話が高速・大容量化に向けてLTEなど最先端の技術を追求するのとは対照的に、M2Mは既存技術を徹底して掘り下げていくというわけだ。

今後の展望として、ガス湯沸かし器やエアコン、ヒーター等のリコール情報の配信といったホームICT分野における「安心・安全」面での活用のほか、電力分野ではスマートグリッドの一環を担うスマートメーター関連で大きな市場が見込まれている。中村氏は「産業廃棄物の追跡なども将来の可能性が高い分野だ。ゴミ箱を見ても、これはどうかなと思ってしまう」と言う。

FOMAユビキタスモジュールの外寸は約37×35.7×5.0mmだが、仮に数mm程度まで小型化され、今より単価が下がれば、これらにとどまらず、ネクタイやメガネ、靴等にも組み込むことができるようになる。そうなればM2Mの可能性は無限大に広がるともいえる。ただいったん機器に組み込めば頻繁に電池を交換することはできないため、低消費電力化も重要だ。

月刊テレコミュニケーション2010年10月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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