「ドコモは黒子」――NTTドコモの位置情報サービスの変化とは?

スマートフォンの普及や屋内測位技術の進化などを背景に、位置情報サービス(LBS:Location-Based Services)の普及が進んでいる。こうしたなか、以前から位置情報サービスを提供してきたNTTドコモにも変化が見られる。ドコモの2つの取り組みを紹介する。

携帯キャリアは従来から、GPSおよび携帯電話基地局から取得した位置情報を使ったサービスを提供してきた。子供の見守りや車両の運行管理ソリューションがその代表例だが、最近NTTドコモの位置情報サービス(LBS:Location-Based Services)がさらなる広がりを見せている。

同社は今年1月、法人向けに「かんたん位置情報サービス」を開始した。スマートフォン/携帯電話等から、GPS端末の位置を検索するためのプラットフォーム機能を提供するものだ。2種類用意された小型GPS端末と、その位置情報を取得して地図上に表示するアプリを提供。企業はこの仕組みを使って、独自のLBSを開発して自社の顧客に提供したり、自社製品に組み込んだりできる。

「かんたん位置情報サービス」のアプリ画面 「かんたん位置情報サービス」のアプリ画面。顧客企業のロゴを加えたり、デザインを変更するなどのカスタマイズが可能だ

端末代は8000円から1万円で、月額利用料は通信料も含めて1端末当たり700円。大型案件については特別価格で提供する。

ドコモ「かんたん位置情報サービス」の小型GPS端末
ドコモ「かんたん位置情報サービス」の小型GPS端末。これは約30gの小型タイプで、ほかに防犯ブザー内蔵タイプもある

法人事業部第二法人営業部M2M営業・第一営業担当課長の山口純一氏は、「今までモバイルとは関わりがなかった企業をターゲットに、位置情報の活用を広げていく」と話す。

「BtoBtoCモデル」に本腰

これまでドコモは、自社の携帯/スマホ契約者に直接、LBSを提供してきた。かんたん位置情報サービスはそうしたBtoCモデルではなく「BtoBtoCおよびBtoBを意識した」ものだ。機能を絞り低コストに利用できるようにすることで、幅広い企業にLBSによる新ビジネス開発を促すのが狙いだ。

すでに多くの案件も動いている。

秋田県とドコモ等が実施した認知症高齢者の見守りサービス実証実験に採用されたほか、例えば学校向けの連絡網サービスを手掛ける企業が子供の位置を詳細にトレースできるようにしてその付加価値を高めたり、バイクの盗難防止サービス(指定エリアから離れると所有者に通報する)にも検討されている。放牧している家畜にGPS端末を付けて探す手間を省くといった案件も具体化しているという。

また、これまで独自にLBSを提供してきたサービス事業者やSIerから、その基盤をかんたん位置情報サービスに置き換えたいという話も寄せられている。「ドコモは黒子に徹し、お客様のビジネス基盤を用意する」という狙いが奏功し、出だしは好調のようだ。

好調の要因は、LBSの開発・提供に必要なアプリ、デバイス、ネットワーク等の構成要素をパッケージ化したうえで、カスタマイズ要求にも柔軟に対応している点にある。山口氏は、「BtoBtoCモデルでは、どこまでカスタマイズできるかがポイント。端末についても、例えばディスプレイを付けたい、音声機能も欲しいといった要望に柔軟に対応していく」と話す。

携帯電話/スマホに比べれば、LBSのARPUは圧倒的に低い。だが、月額料金や端末開発の障壁を低くすることで、幅広い業界・業種に大規模に展開できる道が開ける。成功モデルができれば、1案件で数千から数万の回線獲得にもつながるのがLBSだ。「家畜の例なら、1案件で数千頭に回線が付く」と山口氏は語る。

月刊テレコミュニケーション2014年5月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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