企業ICTは急激に「SaaS志向」へ――セールスフォース宇陀社長インタビュー

高度化するユーザーの要求に、従来のITシステムは応えられない――。セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長はクラウドコンピューティングへの関心の高まり、さらに景気後退も追い風となり「SaaS導入を検討する企業が圧倒的に増えた」と手応えを語る。

――SaaS/クラウドコンピューティングが企業に与える最も大きな変化とは何でしょうか。

宇陀 一言で言えば、スピードとコスト、そしてクオリティが大きく変わるということです。今までできなかったことが、非常に短期間かつ低コストでできるようになります。

従来のシステムとSaaSとで、なぜスピードが違うのか。それは「簡単に直せる」からです。

今までのITは、いったん作ったものを後で直すにはコストもかかり、非常に大変です。そのため開発も慎重に進めていかざるを得ません。

一方、我々のサービスはすでに百数十万人のお客様に使われており、お客様からの数多くの要求に応えるため、年に3回、これまでの9年間で27回のバージョンアップを繰り返してきました。つまり、大抵の機能はすでに網羅されており、利用開始後に「これが必要だった」となっても、ものの5分で機能を追加できます。

だから「とりあえずここからやろう」という形でスタートできる。そこが最も大きな違いですね。

――企業にとってITがさらに身近なものになりますね。

宇陀 今までは、ITを使って何か新しいことができると思い付いても、システムベンダーに見積りを頼んで、稟議プロセスを踏んで契約して、その後ようやく開発と、数カ月もの期間がかかっていました。負担が大きすぎるために実現できないことも多かったでしょう。

他の分野で、そういったことがあるでしょうか。テレビを見るために電気をどうしようかなと考える人はいません。行きたい場所にもクルマや電車ですぐに行けます。でも、ITではまだ、考えた挙句に止めてしまうということが多い。情報を集めて新しいことを考え、思い付きをすんなりと実行できるようになっていけば、ITをもっとビジネスに活かすことができます。

ITもこれまで、その時代ごとに大きく貢献してきました。しかし、ブロードバンドが普及し、コンシューマーWebの世界で技術が大きく進化したことで、これからの法人のITは、まさにガラっと変わるでしょう。

月刊テレコミュニケーション2009年3月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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宇陀栄次(うだ・えいじ)氏

慶応大学法学部卒業後、1981年に日本アイ・ビー・エム入社。2000年までの在任中、大手企業担当の営業部門を経て、社長補佐、製品事業部長、理事情報サービス産業事業部長などの要職を歴任し、情報サービス産業各社との提携や協業の事業責任を担当。01年以降、法人系IT企業の社長を歴任。04年3月、米国セールスフォース・ドットコムSenior Vice President(上級副社長)に就任。同年4月、セールスフォース・ドットコム代表取締役社長に就任。現在に至る。米国セールスフォース・ドットコムSenior Vice President(上級副社長)は兼任

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