<連載>光トランシーバーと光伝送技術を徹底解剖第2回 光トランシーバーの変遷と100G規格

光伝送ネットワークを構成する各種コンポーネントのうち、最も進化が著しい領域の1つが光トランシーバーモジュールだ。その進化の過程で多種多様な規格が生み出されてきた。光トランシーバーへの理解を深め、安全かつ確実に取り扱うための知識を学ぶ本連載。第2回は、20年以上にわたる光トランシーバー規格の変遷を振り返るとともに、現在主流となり、多数の規格が乱立している100G光トランシーバーについて整理する。(編集部)

乱立する100G光伝送規格みなさんは100G光トランシーバーの光伝送規格が何種類あるかご存じでしょうか。光伝送規格を伝送距離と光ファイバーケーブルの種類で分類してみたのが図表2です。

多芯光ファイバー(MPOコネクタ) 2芯光ファイバー(LCコネクタ)
MMF
(Multi Mode Fiber)
100m 100GBASE-SR10(IEEE802.3ba) – CFP/CFP2
100GBASE-SR4(IEEE802.3bm) – CFP4/QSFP28
100GBASE-SR2(IEEE802.3cd) – SFP-DD
100G SWDM4(SWDM Alliance) – QSFP28
100G SRBD(Cisco, ARISTA) – QSFP28
300m 100G eSR4(各社独自) – QSFP28
SMF 500m 100G PSM4(100G PSM4 MSA) QSFP28 100G CWDM4-OCP(Facebook) – QSFP28
100GBASE-DR(IEEE802.3cd) – SFP-DD
2km ieee802
http://www.ieee802.org/3/

swdm
http://www.swdm.org/

4wdm-msa
http://4wdm-msa.org/

cwdm4-msa
http://www.cwdm4-msa.org/

100glambda
http://100glambda.com/

opencompute
https://www.opencompute.org/

100G CWDM4(CWDM4 MSA) – QSFP28
100G FR(100G Lambda MSA) – SFP-DD
10km 100GBASE-LR4(IEEE802.3bm) – CFP4/QSFP28
100G eCWDM4 / 4WDM-10(4WDM MSA) – QSFP28
100G LR(100G Lambda MSA) – SFP-DD
20km 100G eLR4 / 4WDM-20(4WDM MSA) – QSFP28
40km 100GBASE-ER4(IEEE802.3bm) – CFP2
100G ER4f / 4WDM-40(4WDM MSA) – QSFP28
80km 100G ZR4(各社独自) ? QSFP28
100G COLORZ(Inphi) – QSFP28
120km 100G DCO(各社独自) – CFP2/QSFP28

現在、これだけの数の光伝送規格が乱立しています。100Gの光伝送規格には、米国電気電子学会のIEEE802.3 Ethernetワーキンググループで標準化された規格、メーカーを気にせずユーザーが自由に光トランシーバーを選ぶことができるようにMulti Source Agreement(MSA)やその他のアライアンスで策定された規格、そしてメーカー各社の独自規格があります。

図表2の左半分は12芯などの多芯光ファイバー(以下、リボンファイバー)を使用して伝送する光伝送規格、右半分は2芯光ファイバーを使用する伝送規格です。2芯光ファイバーはリボンファイバーと比べて低コストですが、光トランシーバーのコストは短距離向けのリボンファイバーを使用するタイプのほうが低コストです。一般的に、500mを超える距離については、トータルコストの観点で2芯光ファイバーが適しています。

伝送距離で整理してみよう次に伝送距離を見てみましょう。

100m、300m、500m、2km、10km、20km、40km、80km、120kmに対して、それぞれ光伝送規格があります。

100GbEで最初に実現したのは、24芯のリボンファイバーを使用して100mを伝送する「100GBASE-SR10」という規格です。IEEE802.3で標準化された規格、または標準化に向けて議論中の規格は「100GBASE」と呼び、図表2では緑字で表示しています。SR10の10は、光信号が10レーンであることを示します。

当時はCFPという大きな形状(フォームファクター)の光トランシーバーが必要でした。現在はCFP2という形状で実現しています。10G×10レーンから25G×4レーンへのテクノロジーの進化にともないレーザー、受光器がそれぞれ10個から4個になり、劇的に小型化されました。SR10の後、光信号が4レーンで同じ100mを伝送する「100GBASE-SR4」が標準化されました。

SR4のSは短距離(Short)を意味します。現在、100m以内の短距離接続にはこのQSFP28 100G SR4(図表3)が多く使用されています。

図表3 100GBASE-SR4

図表3 100GBASE-SR4

100GBASE-SR4と合わせて、長距離接続用として、光信号が4レーンで10km伝送する「100GBASE-LR4」、40km伝送する「100GBASE-ER4」が標準化されました。

LR4のLは長距離(Long)、ER4のEは長距離拡張版(Extended)を意味しており、2芯の光ファイバーで伝送します。10kmのリボンファイバーを使うことは現実的ではないため、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)という技術を使って、4レーンの光信号を多重して1本の光ファイバーで送ります(図表4)。各レーンの波長をずらし、光合波器(MUX)で1本の光ファイバーに4つの異なる信号を多重します。

図表4 100GBASE-LR4/100GBASE-ER4

図表4 100GBASE-LR4/100GBASE-ER4

一方、受信側は光分波器(DeMUX)で異なる波長ごとに分離して各レーンの信号に分けることができます。様々な波長がまざった太陽光がプリズムによって七色の光に分離される理科の実験を思い出していただければわかりやすいと思います(写真)。

プリズムによる分光
プリズムによる分光

月刊テレコミュニケーション2021年10月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

加藤利之(かとう・としゆき)氏

株式会社マクニカ クラビス カンパニー 技術統括部に所属。長年、電源・高速信号に関連する半導体デバイスのFAE(Field Application Engineer)に従事し、新たに光トランシーバーや光計測機器の技術サポートに活動を拡げる

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