海外展開とエッジAI連携で飛躍へOKIのIoT無線「SmartHop」が挑む2つのステップ

920MHz帯を使う独自のIoT無線「SmartHop」を展開するOKIが、新たなステップを踏み出す。2017年から手掛ける海外展開がいよいよ本格化。エッジAIとの連携による市場開拓も進める。

2013年から6年余り、自営型IoTネットワークを構築するための無線システム「Smart Hop」を展開してきたOKIが、例年開催している「第5回 Smart Hopカンファレンス」(2月6日開催)で、2020年度に向けた重点施策を打ち出した。2017年末に始動した海外展開の本格化と、エッジコンピューティング/AI技術を組み合わせた新ソリューションの開発が柱だ。

ビジネスユニット長の山本高広氏によれば、SmartHopの売上は提供開始から毎年、「前年比30%以上で堅調に伸びている」。その大きな成長要因となっているが、パートナーエコシステムだ。

OKI 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部長の西田慎一郎氏(左)と、企業ソリューション事業部 スマートコミュニケーションシステム部 ビジネスユニット長の山本高広氏
OKI 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部長の西田慎一郎氏(左)と、
企業ソリューション事業部 スマートコミュニケーションシステム部 ビジネスユニット長の山本高広氏



OKIは自ら無線通信ユニット等を製造・販売するほか、パートナー企業がSmartHop対応の通信デバイス等を開発・製造するための通信モジュールも提供している。Smart Hop搭載製品を製造するパートナーは現在35社に及び、100以上の製品がリリースされている。販売パートナーも50社に達した。

特に好調なのが、2017年に投入した電池駆動型の「SRモジュール」の販売だ。2019年の売上は対前年比170%と伸長。今後も「電源が確保できないユースケースでの活用を広げていきたい」と山本氏は話す。

工場の無人搬送システムに活用SmartHopは、920MHz帯の回り込み特性の強さに加えて、バケツリレー方式でデータを転送するマルチホップ型ネットワークが組めるのが特徴だ。大規模な無線通信ネットワークが構築できるうえ、経路を複数用意して置けば、障害発生時にパスを切り替えることで耐障害性も高められる。

こうした特徴を生かしたユースケースの開拓も着実に進んでいる。

今回のカンファレンスで紹介されたユニークな事例が、工場における無人搬送車(AGV)の運用だ。自動車メーカー等を顧客に持つ設備メーカーの坂井電気が手掛けたもので、パジェロやデリカD:5、アウトランダーを製造するパジェロ製造に、SmartHopを活用した無人搬送システムを納入した。

アウトランダーのボディを運ぶAGVにSmartHopの無線子機を搭載。走路上の中継機を介して親機に位置情報等を送信し、状態を監視、運行の効率化を図る。また、走路の各所に警告灯を配置し、AGVの接近を作業員や他の車両に知らせることで安全な運行を実現している。走路の長さは1.5kmで、積載時約1.4トンのAGVを4台、最大時速9kmで運用している。

Smart Hopを採用した理由は、通信の安定性だ。

Wi-Fiも選択肢に挙がったが、敷地内のオフィスでWi-Fiを使っており、民家とも隣接しているため混信の恐れがあった。Smart Hopならその懸念はないうえ、Wi-Fiの2.4/5GHz帯に比べて回り込み特性が強く、長距離通信も可能だ。

事例を紹介した坂井電気の七野芳幸氏は、「Wi-Fiを使っている他の工場では通信が途切れるトラブルが発生しているが、SmartHopは一度も不具合がなく非常に安定している。一度立ち上げてしまえば、大変楽なシステムだ」と評価した。

AGVという移動体での成功例ができたことで、さらにユースケースの開拓が進みそうだ。

月刊テレコミュニケーション2020年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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