IoTでトイレのバルブを遠隔制御――木村技研のビル・商業施設向けシステム

トイレメーカーの木村技研はトイレのIoT化を実現し、利用人数、洗浄水量、滞在時間などのデータをリアルタイムに収集するシステムを開発した。節水に加え、トイレを遠隔制御・監視できるようになった。

「トイレの水が止まらない」――。ビルの管理者から連絡を受けたトイレメーカーのスタッフはPCを操作して、遠隔地にあるトイレのバルブをバタバタと動かす指示をネットワーク経由で送る。すると、付着していたゴミが流れ落ちたバルブは正常に動くようになり、流れ続けていた水は停止する。

これはトイレメーカーの木村技研が2013年5月に開発した「AQUA-Remoni(アクアリモニ)」という、トイレの洗浄水量をリモート制御するシステムの活用シーンだ。

同社は、1972年に節水型トイレシステム「AQUA-ACE(アクアエース)」の販売を開始した。トイレ洗浄に使用する水量が減れば、支払う水道料金も減る。トイレの運用コストを削減したい商業施設やオフィスビルに納入し、業績を伸ばしてきた。同社執行役員開発部部長の佐藤秀氏は、「ある百貨店は、アクアエースの導入によって従来比で1カ月当たり300万円以上の水道料金の削減に成功した」と話す。

データを元に洗浄水量を調整商業施設やオフィスビル向けのトイレは、仕組み自体はどのメーカーの製品も同じだ。しかし、アクアエースがユニークなのは、洗浄水の使用量を調整する機能と、使用量を調整したことによる効果を検証するプロセスを作り込んだところにある。

アクアエースでは、「節水コントローラ」がトイレに関する情報を収集・蓄積する。対象となるデータは、トイレで使用された水量、洗浄回数、利用者数、利用者の滞在時間など。

水量と洗浄回数はバルブの内部に取り付けたメーターでカウントし、そのデータはバルブと有線で接続した節水コントローラのメモリーに蓄積する。利用者数や滞在時間は、個室の内部に設置した赤外線の人検知センサーで計測している。

節水コントローラは、バルブの開閉時間を制御する役割も担っており、人検知センサーと連動して洗浄水の量を調整することが可能だ。

例えば、人検知センサーで把握した滞在時間の長さに基づいてトイレの利用目的が大か小か判別し、大であれば大用の、小であれば小用の洗浄水量を流す。

木村技研のスタッフは、節水コントローラに蓄積したデータを参考に100cc単位で洗浄水の量を調整する。また、その結果を見てさらに水量の低減が可能と判断したら洗浄水の量を100cc減らしてみるというように、微調整を繰り返してトイレごとに最適な水量を割り出している。

月刊テレコミュニケーション2016年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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