無線で電力を遠くまで 10m以上先のIoTデバイスへワイヤレス給電が可能に

あらゆるモノをネットワークにつなげていくうえで、長年の課題となっていたのが電力である。商用電源で常時給電することができないIoTデバイスの電力をどうするか。有線による給電や電池駆動といった従来からある方法では、配線や交換時の人的コストなどで限界がある。この問題が解決されれば、IoTの適用領域は大きく広がるが、ついに期待の次世代技術が実用化される。10m以上先のデバイスへ給電できる空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」(以下、空間伝送型)だ。

ワイヤレス給電にはいくつかの方法があるが、空間伝送型の場合、マイクロ波などを遠方に送電し、受信した電波のエネルギーを電流に変換して使用する。

総務省では早期かつ確実な導入を図るため、空間伝送型を大きく3ステップに分類し、段階を踏んで制度化を進めようとしている。

複数のセンサーに効率的に給電2021年前半にも実用化される第1ステップでは、屋内の有人環境で1W、無人環境で20W程度の送電が可能になる。

第1ステップで想定される用途が、工場や倉庫、配送センターなどの無人エリアにおけるセンサーやカメラなどへの給電だ。

昨今、工場ではIoTデバイスの導入が進んでいるが、空間伝送型であればそれらにスポット的に給電することができる。電池交換の際の作業停止が必要なく、また配線を気にせずに設備のレイアウトを変更できるなど、生産・業務の効率化が実現する。

複数のセンサーに効率的に給電を行う技術として、東芝は「マイクロ波給電システム」を開発している(図表1)。

図表1 東芝のマイクロ波給電技術のイメージ

図表1 東芝のマイクロ波給電技術のイメージ

複数のアンテナがそれぞれターゲットを絞って電力を送電することで、センサー全体を最適に給電できるというものだ。

「ピンポイントで強い電波を送る際、最適なタイミングで発射するアルゴリズムの開発により、実証実験では最大40倍効率化することが実証された」と東芝 上席研究員の三友敏也氏は話す。

東芝 上席研究員 三友敏也氏
東芝 上席研究員 三友敏也氏


一般的に受電側のアンテナが大きいほど送電できる電力も大きくなるが、センサーの場合は取り付けられるアンテナのサイズが限られる。同システムは送電に5.7GHz帯と高い周波数帯を使用することで電波の波長が細くなり、アンテナの小型化を実現しているという。

パナソニックは軽量・フレキシブルな素材を活用し、人体に密着して使用可能な小型・薄型で高効率なアンテナを開発。このアンテナやBLE通信機能などを搭載したカードサイズの複数のセンサーに対し、約5m離れた場所から出力1Wの電力を920MHz帯のマイクロ波を使って送電し、センサーで一括受電する仕組みを構築している(図表2)。

図表2 パナソニックのワイヤレス給電の基本コンセプト

図表2 パナソニックのワイヤレス給電の基本コンセプト

「伝送距離を短くする代わりに出力を抑えることで、既存の無線規格への影響や電波防護指針(電波の人体に対する安全性の基準)に配慮している」とパナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター主任技師の梶原正一氏は説明する。

これに加えてパナソニックは、閉じた空間内でより効率的に給電を行える閉空間内給電技術を開発している。

「閉空間内で電波のマルチパス(電波が反射などの影響で複数の経路を通って届くこと)を活用し、受電する電力を『足し合わせる』ことで効率的に給電を行おうというコンセプト」とパナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部 マニュファクチャリングソリューションセンター係長の谷博之氏は説明する。

パナソニックでは佐鳥電機、関東電気保安協会とともに、この閉空間内給電技術を用いて、キュービクル(高圧受電のための機器一式を金属製の外箱に収めたもの)内のIoTセンサーに給電する実証実験を行っている。

現状、キュービクルの点検作業は資格を持った技術員が中心だが、業務効率化や人手不足対策として、リモートからの監視に移行する動きがある。そのためには多くのセンサーを配置する必要があり、配線レスのワイヤレス給電に対する期待が高いという。

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